新型『日産エルグランド』を渡辺敏史が吟味(前編) デザインはアルヴェルに比べて小賢くまとまりすぎ? 3列目の快適性という意外な発見

公開 : 2026.09.07 10:00

15年ぶりにフルチェンを果たしたLLクラスミニバン、新型『日産エルグランド』を渡辺敏史が取材。第3世代eパワー+eフォースの緻密な駆動制御を中心とした走りの質感の高さで、『アルヴェル』に挑みます。

型式名称E53のラインナップは2グレード構成

いよいよ発売を開始した新型『日産エルグランド』。型式名称E53となるそのラインナップは基本2グレード構成で、パワー&ドライブトレイン、サスペンションやタイヤなどを含むメカニズム面はまったく一緒、つまり走りにまつわる差はなく、価格差は純粋に装備や設えを示すものとなる。

折しもライバルであるトヨタアルファード&ヴェルファイア(以下アルヴェル)は、エルグランドを迎え撃つようなタイミングで廉価グレードを投入、ボトム側の誘引力を強化しているわけで、こちらは例えば1モーターFFなどメカニズムの簡略化で価格競争力を強化するなどの策は考えなかったのだろうか。

いよいよ発売を開始した新型『日産エルグランド』を渡辺敏史が取材。
いよいよ発売を開始した新型『日産エルグランド』を渡辺敏史が取材。    山本佳吾

……と尋ねてみると、四駆じゃなくてもいいから安いに越したことはないという声も一部の販売現場からは確かにあがっているそうだ。が、エルグランドはeパワー+eフォースならではの緻密な駆動制御と、可変ダンパーの個別ソレノイド制御とのフュージョンで乗り味を作り込んでいることもあり、少なくとも現時点ではこの3要素が欠けるような仕様は考えていないという。

気にかかっていたエクステリアデザイン

同様に、個人的に気にかかっていたのがエクステリアデザインだ。アルヴェルのモデリスタ巻きに代表されるオラオラぶりがこの手の市場のすう勢とあらば、こちらはちょっと小賢くまとまりすぎてるんじゃないか。

そもそもそういうわかりやすい施しこそ日産の十八番だったではないか……と心配でさえあったのだが、蓋を開けてみればお客さんの反応は良好で、他とは違う表現をきちんと評価してくれているそうだ。

エクステリアデザインに関して、他とは違う表現をがきちんと評価されているようだ。
エクステリアデザインに関して、他とは違う表現をがきちんと評価されているようだ。    山本佳吾

また、メーカーオプションやオーテック・ブランドによる援護射撃も整っていて、顔周りをよりギラつかせる、あるいは引き締めるような選択肢も用意されている。

欲しかったフラッグシップとしてのこだわり

取材車は上位グレードとなるGで、内装はふたつのカラーが用意される。いずれも黒に近い濃さの濃紫を軸にするものだが、白系とのコンビで雪景色の静けさを表現したという『銀雪(ギンセツ)』と名付けられた色味だった(編集部注:撮影車は『紫檀(シタン)』となります)。

日産はアリアあたりから切子や組木など日本の伝統工芸的なモチーフを反映した演出に力を入れているが、エルグランドも刺子を思わせる菱形のステッチがシートやドアトリムに配される。

取材車は上位グレードとなるGで、撮影車の内装はふたつ用意されるうちの『紫檀(シタン)』。
取材車は上位グレードとなるGで、撮影車の内装はふたつ用意されるうちの『紫檀(シタン)』。    山本佳吾

標準グレードのXにはこれらの演出はなく、表皮やトリムは黒の標準的な合成皮革を採用。Gの表皮にはテーラーフィットと名付けられた自然な風合いの人工レザーとなるが、確かにしっとりとした肌触りはセミアニリン鞣しを思わせてくれた。このGをベースに更なる架装を施したNMC(日産モータースポーツ&カスタマイズ)扱いのグレード、VIPにはナッパレザーを用いた本革のトリムが用意される。

後席回りの設えについては、一見ではやはりアルヴェルの側がご立派感がわかりやすい。それは多分に大型アームレストが固定された独立シートの絵面的な面が大きいわけだが、センターテーブルやスイッチ類、室内灯などのディテールにも、エルグランドにはフラッグシップとしてのこだわりが欲しかったようには思う。その点、アルヴェルはやっぱり隙がない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渡辺敏史

    Toshifumi Watanabe

    1967年生まれ。企画室ネコにて二輪・四輪誌の編集に携わった後、自動車ライターとしてフリーに。車歴の90%以上は中古車で、今までに購入した新車はJA11型スズキ・ジムニー(フルメタルドア)、NHW10型トヨタ・プリウス(人生唯一のミズテン買い)、FD3S型マツダRX-7の3台。現在はそのRX−7と中古の996型ポルシェ911を愛用中。
  • 撮影

    山本佳吾

    Keigo Yamamoto

    1975年大阪生まれ。阪神タイガースと鉄道とラリーが大好物。ちょっとだけ長い大学生活を経てフリーターに。日本初開催のWRC観戦をきっかけにカメラマンとなる。ここ数年はERCや欧州の国内選手権にまで手を出してしまい収拾がつかない模様。ラリー取材ついでの海外乗り鉄旅がもっぱらの楽しみ。格安航空券を見つけることが得意だが飛行機は苦手。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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