【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#42 デートカーの帝王!トヨタ・ソアラの誕生と終焉

公開 : 2026.10.02 12:05

自動車はロマンだ! モータージャーナリストであり大乗フェラーリ教開祖の顔を持つ清水草一が『最後の自動車ロマン』をテーマに執筆する、隔週金曜日掲載の連載です。第42回は『デートカーの帝王!トヨタ・ソアラの誕生と終焉』を語ります。

1980年代デートカーの真打ち!

ここまで、愛車だった初代日産ガゼールや歴代日産シルビアについて書いてきた。

初代ガゼールおよび姉妹車の3代目シルビアは、1980年代に一世を風靡したデートカーの元祖だが、1980年代デートカーの真打ちと言えば、だれが何と言おうと『トヨタ・ソアラ』である。

1980年代デートカーの真打ちと言えば『トヨタ・ソアラ』である!(写真は若き日の筆者)
1980年代デートカーの真打ちと言えば『トヨタ・ソアラ』である!(写真は若き日の筆者)    清水草一

初代ソアラが発表されたのは、1981年2月。私が初代ガゼールを手に入れてから、わずか数ヵ月後のことだった。

当時の私は「パワーよりカッコが重要」と考えていたが、それは当時の国産車が、最高でも145馬力程度の横並びで、パワーを求めても、求めようがなかったからに過ぎない。

そんな状況下で、ソアラは突如として170馬力(2.8L直列6気筒DOHC)で登場した。170馬力という数字は天文学的であり、禁断の麻薬が解禁されたかのような衝撃だった。

しかもソアラは、超モダンな直線基調のクーペスタイルで、デザインも超私好み。とてつもなくカッコよかった。

TVCMはこう連呼した。

「未体験ゾーンへ」

うおおおお! こんな国産車が出るなんて信じられない!

私の憧れに拍車をかけたのは、モータージャーナリストのインプレッションだった。

ある自動車評論家は、ドイツで開催されたソアラの事前試乗会でアウトバーンを走行し、「デジタルメーターが一瞬、時速200キロを表示したんですよ」と、衝撃的な証言を行った。

うおおおお、アウトバーンで時速200キロ! 天上界の未体験ゾーンやんけ!

ソアラが我が家にやってくる!

ちょうどその頃、免許を再取得した父が、クルマの買い替えを検討し始めていた。母の日産ローレルは排ガス規制の影響により激遅で、峠を上るのに一苦労していたからである。

「お父さん、買い替えるならソアラがいいんじゃない?」

本当の本気で純白!さすがスーパーホワイト!(これも若き日の筆者)
本当の本気で純白!さすがスーパーホワイト!(これも若き日の筆者)    清水草一

私はダメ元でそう進言を繰り返した。するとクルマに疎い父は、特に他車を検討することもなく、あっさりソアラに決めた。

うおおおお、ソアラが我が家にやってくる! これは夢か現実か?

数ヵ月後。我が家に届いた純白(スーパーホワイト)のソアラ2800GTは、なにもかもが光り輝いていた。自分のガゼールと並べると、ボディの白さがまるで違う。本当の本気で純白なのである。さすがスーパーホワイト!

そして走りは、文字どおりの未体験ゾーン。なにしろこちとら、サニーとガゼールしか乗ったことないんですからね。170馬力の加速は圧倒的で、乗り心地もまるで雲の上。デジタルメーターも超未来的でカッコ良すぎた。

父のソアラを借りて、大学サークルの練習に乗り付けた時は、部員の女子大生たちが「乗せて乗せて~」と列をなした。列といっても4名でしたが、そんなことも未体験ゾーン! 私は女子大生を4名ソアラに満載してそこらを一周したが、そんな奇跡は、その後の人生で二度と起きなかった。さすがデートカーの帝王である。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    清水草一

    Souichi Shimizu

    1962年生まれ。慶応義塾大学卒業後、集英社で編集者して活躍した後、フリーランスのモータージャーナリストに。フェラーリの魅力を広めるべく『大乗フェラーリ教開祖』としても活動し、中古フェラーリを10台以上乗り継いでいる。多くの輸入中古車も乗り継ぎ、現在はプジョー508を所有する。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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