【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#39 カッコよければすべて善し!初代日産ガゼール

公開 : 2026.08.21 12:05

自動車はロマンだ! モータージャーナリストであり大乗フェラーリ教開祖の顔を持つ清水草一が『最後の自動車ロマン』をテーマに執筆する、隔週金曜日掲載の連載です。第39回は『カッコよければすべて善し!初代日産ガゼール』を語ります。

全開で走れば誰にも負けない!

1980年、18歳で自動車免許を取った私が最初に乗り回したのは、姉の日産サニークーペGL(1.2リッター 4MT)。私はそのサニーでスピード狂になり、高速道路を全開また全開で走った。

なぜ私は狂ったのか。おそらく勝利に酔っていたのだろう。

清水草一の所有車シリーズ、今回は日産ガゼールです!
清水草一の所有車シリーズ、今回は日産ガゼールです!    日産自動車

1.2リッターのサニーでも、全開で走ると誰にも負けなかった(直線限定)。頭のネジが吹っ飛んだドライバーはそんなにいないというだけの話だが、アクセルを踏むだけで自動的に勝利が転がり込んでくる。それはとてつもない快感だった。

18歳の青年が普通に生活していて、明白な勝利を実感できることなど滅多にない。しょっちゅう受験に合格したりできないし、スポーツで勝つ機会もない。

しかしサニーで高速道路を走れば、一回で数えきれないほどの勝利を重ねられる。こんなに気持ちいいことがあるだろうか!!

マンガ『サーキットの狼』にて、公道グランプリの出場者たちは、相手を抜くと「ザコめ!」とほざいたりしているが、まさにその感覚だった。私は誰かのクルマを抜くたびに、心の中で「ザコめ!」とほざきつつ、勝利の美酒に酔っていたのである。

私がそんな風になった背景には、体育がずっと『3』だったという事実もあるだろう。運動神経に恵まれなかった自分も、クルマという機械に頼れば、ものすごく速く走れた(自分よりは)。なんという快楽!

まだスピードはロマンだった!

私がスピード狂になったもうひとつの理由。それは、当時はまだスピードがロマンだったことにある。

サニーでアクセルを踏む。フロア4MTを駆使すれば、あっという間に速度は未体験ゾーンだ。もちろん大して出ませんけどね、『出せるだけ出す』というのは冒険そのもの、すなわちロマンである。

ものすごくカッコいいクルマ、その名は日産シルビア!
ものすごくカッコいいクルマ、その名は日産シルビア!    日産自動車

当時のクルマはそんなに速く走れなかったから、スピードは貴重な存在でもあった。当時は今と違って、スピードを出すと誰もがコーフンし、喜んでくれた。スピードは未知なる豊かさ。スピードを出すだけでヒーローになれた。アクセルを全開にしないのはバカ! って感じだった。

しかし私はサニーに不満があった。すごくカッコ悪かったのである。ああ、もっとカッコいいクルマに乗りたい!

自動車雑誌を見ていて、ものすごくカッコいいクルマに目が止まった。その名は日産シルビア。3代目のS110型である。

3代目シルビアは、直線基調のハッチバック/クーペ。当時流行りの角形4灯ヘッドライトを持ち、ものすごく速そうでカッコよかった。実際はぜんぜん速くなかったですけど、当時速いクルマなんてほとんどなく、だいたい横並びだったので、カッコよければすべて善し。速さはアクセル全開で叩き出せば善しだった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    清水草一

    Souichi Shimizu

    1962年生まれ。慶応義塾大学卒業後、集英社で編集者して活躍した後、フリーランスのモータージャーナリストに。フェラーリの魅力を広めるべく『大乗フェラーリ教開祖』としても活動し、中古フェラーリを10台以上乗り継いでいる。多くの輸入中古車も乗り継ぎ、現在はプジョー508を所有する。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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