ホンモノの誘惑 中古で探すアストンDB7/フェラーリF355/ポルシェ911ターボ 前編

公開 : 2018.02.05 10:40  更新 : 2018.02.05 16:09

黒いドレスの美女

10年落ちのフェラーリを扱うには、常識を常識だと信じてはいけない。なにしろスロットルのひと踏みだけで、プリマドンナは完全にご機嫌を損ねてしまうことだってあるからだ。そしてそれは、往々にして高くつく。

ただし、このフェラーリF355に関しては、そこまで慎重になる必要はないかもしれない。「現代的フェラーリ」の最初のモデルだからである。

ルカ・ディ・モンテゼーモロの指揮下で開発された最初のモデルだが、彼の呪文によってフェラーリの品質は一気に向上し、所有に伴う困難な約束事は大幅に減少した。おかげで、依然として高額きわまりないランニングコストが伴うにせよ、本当に毎日のアシとして使うことのできる、記念すべき最初のフェラーリとなった。
 

この左ハンドルの黒いベルリネッタは1997年式のマニュアルシフトで、オドメーターの数値はわずか4万2000kmほどだ。870万円の希望販売価格がなかなか悪くないのは、実際に運転しなくても想像できるF335の魅力を考えればわかるだろう。なんたってフェラーリなのだから。ピニンファリーナのデザインによるスタイリングには強烈な存在感があり、周囲から受ける羨望の眼差しにかけては、ほかのクルマとは役者が違う。  

この極上の個体は、健やかに年月を過ごしてきたように見える。ステルスブラックの塗装にはまだ深い艶があり、キズはまったく見当たらない。

ブラックのキャビンも見たところまったく無傷で、そしてエンジンベイには油染みのカケラもない。さらに、ともにアルミ製の穴あきペダルとむき出しのシフトゲートにも、やはりキズやサビはまったく見られない。

気になるのはダッシュボードのスイッチが、ひとつかふたつではあるが妙な位置にあることくらいだ。

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