英「覆面調査」ビジネス 自動車ディーラー専門も 同行で実態さぐる

公開 : 2018.03.21 11:40

ほんとうに求められていること

「ひきょうな手かもしれませんが、ディーラーの能力を正しく切り分けて測るにはこうするしかないんです」とファーミンはいう。「わたしたちの顧客は、測りやすくてすでに根づいた接客の『手順』が守られるかではなくて、接客対応そのものを知りたがっています。調査員に聞くのは、『いちばん大事なお客様として扱われている感じを受けたか』ということです」

オートモーティブ・インサイツのルーツはアメリカ。ファーミンが「ゆりかご接客」とたとえる国だ。

ファーミンは続ける。「バーでのチップ文化がアメリカの良質な接客を育ててきたのです。偽善ともとれますが、アメリカ人がチップを持ちこんだことで接客に活気と興奮がもたらされたことはまちがいないでしょう」

ありがたいことに、イギリスの顧客が求めているのは、「ごきげんよう」の言葉そのものではない。むしろ、われわれの優しいユーモア、率直さ、そしてものいわぬ辛抱がおりなす心地よいハーモニーだ。

彼はこうもいっている。「本気になったイギリス人ほど接遇に長けたひとはいませんね」。 くだんのフォードのセールスマンにもいってやってほしい。

番外編 潜入訪問に同行

オートモーティブ・インサイツ覆面調査員の潜入訪問に同行して。実際にどのような評価がなされるのか、覗いてみた。

調査員1の場合

ショールームに入ったときにあいさつを受けた記憶すらないが、展示車のそばに行くとすぐにセールスマンが寄ってきた。調査員は訪問理由を告げ、セールスマンに進行をまかせた。

セールスマンは支払に関するこちらの質問に食いつくと、残価設定ローン契約についてこちらの興味のないささいなことまで10分間も、ぼそぼそと抑揚のない話し方で延々説明し続けた。

彼としてはいちばん効率的な手順にそったのだろうが、その段階でそんな説明はいらなかったわけで、われわれとしてはむだ足になってしまった。

調査員2の場合

セールスマンはとりたてて愛想よくはなかったし、うちの誇るクルマをぜひわたしに買ってほしいという熱意も感じとれなかった。そんなわけで、彼からクルマを買いたいという気持ちはおこらなかった。

わたしの目を見て身振り手振りやユーモアをまじえて話すこともまるでなく、親しみを込めてわたしを名前でよぶことも、世間話で気を引くこともなかった。彼にとってわたしがいちばん大事だという感じには受けとれなかったといわざるをえない。

家族や友人にこのディーラーをすすめられるとは思えない。

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