なぜCEO自らステアリングを握るのか? フォード:モータースポーツ賞(前編) #AUTOCARアワード2026

公開 : 2026.07.07 17:05

レースに本腰を入れているフォード。現CEO自ら情熱を注ぎ、活動範囲を広げていますが、それは単なるマーケティング戦略にとどまりません。その熱心な姿勢から、AUTOCARアワードでモータースポーツ賞を受賞しました。

125年にわたるモータースポーツ活動

フォードは、正式に設立される前からレース活動を行ってきた。それでも、現CEOのジム・ファーリー氏が「モータースポーツが当社にとってこれほど重要だったことはない」と語るのは、決して大げさな表現ではない。

このことを如実に物語っているのは、ファーリー氏のレースに対する熱意だけではない。取材のために防音仕様の豪華なモーターホームの中で話をしている最中、わたし達は全開で唸る5.0L自然吸気V8エンジンの轟音に負けないように、声を張り上げなければならなかった。

フォード・レーシングは非常に幅広くモータースポーツに携わっている。
フォード・レーシングは非常に幅広くモータースポーツに携わっている。

3月下旬。数万人の観客がセブリング・インターナショナル・レースウェイに詰めかけ、世界トップクラスのスポーツカードライバーたちによる、フロリダのこのサーキットの容赦ないコンクリート路面で12時間にわたる激しい戦いを見守っていた。この日、ファーリー氏は仕事モード全開だ。あの特徴的なV8サウンドを響かせるワークスのマスタングGT3をサポートするとともに、新たなLMDhハイパーカーの開発のために、さまざまな会議が予定されている。

今年、ヘンリー・フォード氏が自ら手掛けた車両を初めてレースに出場させてから125年が経つ。そうした競技への献身的な姿勢こそ、AUTOCARがフォード・レーシングに「モータースポーツ賞」を授与するきっかけとなった。フォードはダカール・ラリーからF1に至るまで、世界34の選手権をサポートしており、その取り組みはますます広がっている。

ジム・ファーリーCEOは生粋のレース好き

「わたし達は、モータースポーツを単なるマーケティング活動として捉えるのではなく、製品の卓越性を高めるための原動力として捉えるように考え方を転換しました」とファーリー氏は語る。

「フォードにおけるモータースポーツはこれまで、ヘンリー・フォードを除いて、そのような視点で捉えられたことはありませんでした。彼が最初に製作した数台のマシンには、レーシングカーのあらゆる優れた要素を取り入れ、手頃な価格にするという哲学が込められていました。勝利を収め、エンジニアリングを通じて製品を改良することで、素晴らしいビジネスを築くことができるのです」

フォード・マスタングを駆るジム・ファーリーCEO
フォード・マスタングを駆るジム・ファーリーCEO

ファーリー氏はレースをビジネス化しているものの、今回彼がセブリングにいる理由はビジネスだけではない。取材の前日、彼はフォードのCEOとしてではなく、アマチュアレーサーとして「フォード・マスタング・チャレンジ」でライバルたちと競い合っていたのだ。だからこそ、AUTOCARは彼に話を聞くためにここを訪れた。

ファーリー氏は生粋のモータースポーツファンだ。その情熱は、若き日に当時フェラーリの米国輸入業者だったルイジ・チネッティ氏と親交を深め、後に1961年のF1チャンピオン、フィル・ヒル氏の修理工房で働いた経験によって培われた。英国のグッドウッドでGT40を駆って参戦した経験もあり、現在はローラT298でもレースを行っている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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