VW I.D. Rパイクスピーク コースレコード樹立なぜできた? 背景とは

公開 : 2018.08.05 10:10

7分57秒148 EVの勝利

ひとりが驚きの叫び声をあげると、他のひとびともそれに応じた。そして、ひとりが大声で記録更新を断言したが、実際にはまだなにも確実なことなどなかったのだ。コースのロワーセクションはクリアだったが、中間セクション以降は厚い霧に覆われていた。「そこではリスクのある走りはしませんでした」とデュマはいう。「グリップが感じられませんでした。霧のために路面温度が非常に低く、すこしスロットルを戻す必要がありました」

デュマの計算では、コースのミドルセクションで4秒から5秒を失ったはずだった。だが、ファイナルセクションで状況は好転した。「頂上付近に辿り着いた時には太陽が再び顔を出し、グリップを感じることができました。ですから、高速コーナーでは再びマシンをプッシュしました。楽しかったですよ」そして、ついに、デュマは確信した。

「記録を更新したときには、それを感じるものです」と彼はいう。「中間計時は知りませんでしたが、最後の数kmで充分レコードが狙えると分かりました。ですから、リスクを冒さなかったのです」


デュマがゴールラインを切ったとき、時計は7分57秒148を示していた。平均時速145.7km/hで156のコーナーをもつ、平均斜度7.2%のコースを駆け抜けたのだ。新たなEVレコードの誕生であり、新たなコースレコードが生まれた瞬間だった。デュマはさらに10秒はタイムを縮めることができたはずだという。「しかし、パイクスピークに完ぺきな条件など望めないでしょう?」と彼はつづける。

スタート地点では、フォルクスワーゲン・モータースポーツもようやく長い待機から解放され、彼らの7カ月の努力が、期待以上のものとなって報われたことを知った。EVが、アメリカで2番目に古い歴史をもつモータースポーツ・イベントで、これまでに登場したどの内燃エンジンを積んだマシンよりも、速いということを証明したのだ。「これは、パイクスピークだけでなく、すべてのモータースポーツにとって、特別な瞬間です」とデュマはいう。それも当然だろう。

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