VW I.D. Rパイクスピーク コースレコード樹立なぜできた? 背景とは

公開 : 2018.08.05 10:10

さらなる記録更新も 決めるのはパイクスピーク

しかし、天気とパイクスピークが常に甘い顔を見せるわけではない。最新技術だけではどうしようもないものがあるということだろう。「雲が広がるのが見え、さらに雨も降り出しそうでした」とフォルクスワーゲン・モータースポーツを率いるスベン・スミーツは話している。「幸運にも、パイクスピークは今回われわれの味方でした。つまり『トップをねらえ』と言ってくれたんです。それを成し遂げることが出来て非常にうれしく思います」

予報のとおり、ランチタイムには嵐がやって来た。最初に雨、そして霰、さらに雪が降って来たのだ。レースの進行は遅れ、後からコースにでたチームは短縮されたコースで戦うしかなかった。そして、ドライバーたちは、すべての出走者が走り終えるまで、パイクスピーク頂上での待機を余儀なくされていた。つまり、デュマも再びの待機を強いられることになったのだ。

頂上にある小屋で、「不味いハンバーガー」を食べ、無料のドーナツは遠慮しつつ、雪合戦に興じた。そして、歴史をつくってから7時間ほど待たされたあとで、ようやくパイクスピークの麓へと降りることを許されたのだ。バッテリー切れのために牽引が必要となったI.D. Rパイクスピークのかわりに、ポール・ダレンバックのPVAスペシャルの巨大なリアウイングに腰かけてデュマは戻って来た。


2013年にローブがそれまでの記録を90秒以上も短縮したとき、多くが、このパイクスピークを「破壊」したかのような記録が更新されることはないだろうと考え、ヒルレコードを巡る長きに渡る戦いに、ついに終止符が打たれたと思った。

しかし、その記録もわずか5年で更新されることになった。そして、このEVの勝利と、デュマとフォルクスワーゲンの記録は、パイクスピークの歴史を書き換えることになるだろう。「とてつもない記録です」とかつてのパイクスピーク・チャンピオンで、レコードホルダーでもあったダレンバックはいう。

「ローブの記録が破られることなどないと思っていました、しかし、EVテクノロジーがさらに進化するとすれば、もはや限界などないようにさえ感じられます」 もし、そうだとしても、最後はこの山が決めるのだろう。

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