ホットハッチ三つ巴対決 フォーカスRSに挑むシロッコR 前編 回顧録

公開 : 2018.10.24 18:10

スペックがすべてではない

追って登場するゴルフRのような4WDではないが、このもっともホットなシロッコの2.0ℓエンジンはお馴染みのターボ過給と新設計のシリンダーヘッドを組み合わせ(要するに5代目ゴルフGTIのユニットをさらにチューンしたものだ)、256ps/33.7kg-mを発生する。TSIエンジンよりも高められた過給圧は最大1.2barに達し、インタークーラーのキャパシティを上げて増大した熱に対応している。

また、シロッコRにはゴルフGTIで導入された電子制御ディファレンシャルが標準装備され、エンジンパワーをクレバーに路面へと伝達する。トランスミッションは6段マニュアルが標準だが、約20万円のオプションでDSGを選択することも可能だ。今回の試乗車はまさにそういう仕様だったのだが、これオンロードでの魅力に大きく貢献している。

それはつまり、VWが公表している動力性能は0-100km/h加速が6.4秒、最高速度が250km/h(リミッター)にとどまり、紙の上の数字では残念ながらライバルたちの敵ではないのだが、必ずしもそれがすべてではないと今回の試乗で判明したということだ。紙の上に書かれた数字はある一面を示しているに過ぎず、実際に路上で起こったこととは別の話だったのである。

その話に移る前に、なぜシロッコRには四輪駆動が採用されなかったのかについて、少し述べておこう。理由はふたつある。パッケージングと価格だ。リアサスを四輪駆動のメカニズムに対応させるために再設計するとしたら、価格は邦貨換算で600万円を突破してしまう。それが彼らにはどうにも受け入れられなかったわけだ。

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