シビック・タイプR x フォーカス ST(2) 技術力実感のVTEC カーブで輝くFFシャシー

公開 : 2025.11.28 18:10

終焉近づくガソリンを燃やすホットハッチ 要にあるFF+MTのパッケージ ホンダの技術力を実感するエンジン カーブでは水を得た魚のフォード 2台のホットハッチへUK編集部が試乗

ホンダの技術力を実感するエンジン

ホンダ・シビック・タイプRが自然吸気エンジンでなくなってしばらく経つが、オーバースクエアなシリンダーを持つFL5型の2.0L 4気筒VTECターボは、並外れた能力を宿す。パワフルでバランスに優れ、軽々と吹け上がる。

42.7kg-mと最大トルクは太いが、回転上昇とともにスリリングさも高まる。ドラマチックでありつつ、時にはジェントルにも扱える。右足の加減で速度管理しやすく、必要になれば間髪入れず反応してくれる。

左からホンダ・シビック・タイプRと、フォード・フォーカス ST エディション
左からホンダ・シビック・タイプRと、フォード・フォーカス ST エディション    マックス・エドレストン(Max Edleston)

C519型のフォード・フォーカス ST エディションが積む2.3L4気筒ターボは、ロングストローク。低域トルクが太く、シフトダウンを多少サボってもお構いなし。それでも、アクセルレスポンスは比較すると若干スロー。ホンダの秀でた技術力を、実感する。

コーナリングは水を得た魚のよう

シビック・タイプRは、6速MTの感触もこの上なく素晴らしい。夢に描いたような一体感を醸し出す。シフトチェンジする度に、エンジンを操る喜びにも浸れる。

シフトノブは、優雅と表現したい削り出しのアルミニウム。ゲートへコクリと吸い込まれ、ギアが噛み合わさる様子が手のひらを通じて伝わる。超高解像度で。フォーカス STの6速MTも優秀だが、比べてしまうとゴムのような曖昧さを感じてしまう。

フォード・フォーカス ST エディション(英国仕様)
フォード・フォーカス ST エディション(英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

パフォーマンスもそれぞれ異なる。フォーカス STは低域の力強さを活かし、ヘアピンカーブから立ち上がる意欲ぶりへ惹き込まれる。コーナリングは、水を得た魚のよう。サウンドシンポーザーが、吸気音を増幅する。

シビック・タイプRは、パワーの上昇が鮮烈。聴覚体験もクリアでリアル。もっと速く走ろうと、ドライバーを誘惑してくるようだ。ただし、重さは感じないもののボディは大きい。ホイールベースは長く、左右のドアミラーは離れている。

操縦性は軽快 根底にある落ち着いたマナー

グリップは出色で、姿勢制御に無駄はなし。ステアリングの精緻さにも唸る。ナンバー付きのツーリングカー・レーサーのように、カーブではラインへ食らいつき、粘り強く放さない。一層激しく、速く旋回させたいと思わせる。

それでも、敏捷性より安定性の方へ軸足はある。操縦性は軽快だが、落ち着いたマナーが根底にある。往年のシビック・タイプRのような、生粋のエンターテインメント・ハッチバックとは異なる特性だろう。

ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)
ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

他方、KW社製の車高調コイルオーバーキットとブレンボ社製ブレーキで武装した、フォーカス ST「エディション」でも、往年のキャラクターは変わらない。より小さく、自然な身軽さを楽しめる。

コーナリングは、期待通りにシャープ。頂点を過ぎた辺りで右足を緩めると、フロントノーズが食い込むように吸い込まれる。リミテッドスリップ・デフをロックさせるのとは別のスタンスで、ストレートを目指せる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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