FF+MTのホットハッチ永遠に シビック・タイプR x フォーカス ST(1) 自然吸気の記憶が蘇る

公開 : 2025.11.28 18:05

終焉近づくガソリンを燃やすホットハッチ 要にあるFF+MTのパッケージ ホンダの技術力を実感するエンジン カーブでは水を得た魚のフォード 2台のホットハッチへUK編集部が試乗

終焉近づくガソリンを燃やすホットハッチ

ガソリンを燃やし熱く走る、ホットハッチには終焉が近づいている。特に英国では。

この事実に対する印象は、アルピーヌA290アバルト500e、ヒョンデアイオニック5 Nなどへの受け止め方で、大きく異なるだろう。いずれにしても、半世紀をかけて進化してきた高性能ハッチバックの次章が、どう転じるのか確信は持てていないはず。

左からフォード・フォーカス ST エディションと、ホンダ・シビック・タイプR
左からフォード・フォーカス ST エディションと、ホンダシビック・タイプR    マックス・エドレストン(Max Edleston)

GTiを冠するモデルを、プジョーがラインナップから消して久しい。スイフト・スポーツは、現行の4代目に設定はない。トヨタGRヤリスは、英国の配当ぶんが完売している。ホンダ・シビック・タイプRも、2026年にはグレートブリテン島での販売を終える。

最近、フォード・フォーカス STも生産終了が告知された。恐らく、このコンテンツがアップされる頃には、ドイツ中西部、ザールルイ工場の製造ラインは閑散としているはず。2025年8月の時点で100台だった残りの受注可能数も、埋まったらしい。

自然吸気ユニットの記憶が蘇る

この別れを惜しむべく、約束していたフォーカス STの貸し出しを、英国フォードは突如キャンセルした。担当者によると、8月でフォーカスの広報車の設定は終了したという。同社史上で最高傑作の1つは、過去のものになった。

英国編集部は、SNSを頼った。限定仕様のオーナーになったばかりのジム・ウッド氏が、快く貸し出してくれるという。グレートブリテン島西部、ウェールズ州に並ぶライト・ブルーの2台は、少し憂鬱な気分を代弁しているように映る。

左からホンダ・シビック・タイプRと、フォード・フォーカス ST エディション
左からホンダ・シビック・タイプRと、フォード・フォーカス ST エディション    マックス・エドレストン(Max Edleston)

シビック・タイプRの伝説は、多くの読者にとって馴染み深いものだろう。2.0L 4気筒VTECターボエンジンの吹け上がりへ悦に浸る度に、トルクこそ劣るものの、高回転型だった自然吸気ユニットの記憶が蘇る。

フォーカス STでは、2.3L 4気筒ターボを回すほど、ボルボ由来の5気筒エンジンを積んでいた2代目の体験がよぎる。自然吸気らしい咆哮が、鼓膜を震わせたものだ。

ホットハッチのピークは2000年代初頭

ホットハッチのピークは、2000年代初頭だろう。フォーカス RSやフォルクスワーゲン・ゴルフ R32、アルファ・ロメオ147 GTAといった名車が生まれている。ルノー・スポール・クリオ(ルーテシア)182トロフィーや、BMW 130iも忘れがたい。

史上ベストは、プジョー205 GTiのようなラテン系か、初代フォルクスワーゲン・ゴルフ GTIか。日産パルサー GTI-Rやマツダ323(ファミリア) GT-Rなど、気鋭の日本車だと主張する人もいらっしゃるだろう。今では、おじさんの思い出話の領域だが。

ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)
ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

それでも、今回の2台は現在へ生き残っている。姿形は変わっても、4代目のC519型フォーカス ST エディションと6代目のFL5型シビック・タイプRは、MTを介してフロントアクスルが駆動される生粋のホットハッチ。象徴的なモデルといえる。

往年の傑作へ匹敵する、2台といっていい。お別れの時が来た今、そっと幕引きさせるなんてもったいない。しっかり、その実力を堪能しなければ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

シビック・タイプR x フォーカス STの前後関係

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