試乗 アルファ・ロメオ・ジュリエッタ・スプリント ハンドメイドの不完全さもそのままに

公開 : 2019.06.04 20:10  更新 : 2021.02.02 12:51

アルファ・ロメオの歴史を受け継ぐ記念碑

ジュリエッタ・スプリントが完成以来、RAC(ロイヤル・オートモービル・クラブ)のロンドンにある会員施設、ポールモール・クラブハウスに誇らしげに展示されていたが、たくさんの賞賛を集めることになった。またハンプトンコート宮殿でのコンクールデレガンスにも赴いたそうだが、グレゴリーはノミネート車両としてではなく、移動手段として走らせたという。

「日常的にクルマを走らせるということは、コンディションの維持に重要なことです。アルファ・ロメオの博物館に展示されても良いとは思いますが、クルマのことを考えると二の足を踏んでしまいますね」

冒頭のとおり、この00024のシャシーナンバーを持つジュリエッタ・スプリントは、現存する中で最も初期のクルマだと思われる。「このクルマが誕生する前に、10台のスプリントが販売されているはずです。しかし、まだ発見されていません。もしかするとイタリアのどこかの納屋にひっそり眠っている可能性もありますが」


イタリアでは最も有名なアルファ・ロメオのコレクター、コラード・ロプレストは、シャシーナンバー002のクルマを所有しているが、実際はシャシーナンバーが刻まれたプレートのみ。1958年にイタリアのエンジニア、エドゥアルド・ウェバーのためにヴェローチェ仕様へと作り変えられているのだ。一般的には税金対策だったと考えられている。

この究極的に美しく仕上げられたジュリエッタ・スプリントの将来はまだ決まっていない。しかし少なくとも、グレゴリーと、このレストアに協力した優れた仲間たちが成し遂げた偉業は、非常に誇り高いものだ。レストア作業を通じて明らかになった、シャシーナンバー00024が秘めたハンドメイドの痕跡や、当時の所有者の歴史までも、われわれは鮮明に知ることができた。

グレゴリーが持つジュリエッタに対する深遠な情熱が、この貴重なクルマとエピソードを、次の世代へとつなぐことを可能にした。およそ10年間に及んだプロジェクトとなったそうだ。オリジナルモデルのデザイン・設計チームやエンジニア、板金職人と、アルファ・ロメオの歴史に対しての、記念碑的な素晴らしい存在となったといえる。

自動車が単なる工業製品以上の価値や文化性を持っていることを表す、素晴らしいエピソードだと思う。

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