フェラーリの生き証人 「166MM」実車展示へ ル・マン初優勝車など4台

公開 : 2019.06.04 06:10

23時間 1人でドライブ

ミッレ・ミリア直後の5月、米国で活動していたイタリア人レーサーのルイジ・キネッティは、このクルマを英国人貴族のセルスドン卿に販売する契約をまとめる。

ル・マン24時間で既に2度の優勝経験があるキネッティは、3度目の勝利を欲していた。そのためにこの166MMを使おうと考えたのだ。そこでオーナーのセルスドン男爵にコ・ドライバーとしてレースに参加させることで、キネッティは思い通りになるチャンスを得た。翌6月、2人は予定通りル・マンのグリッドに着く。

キネッティはまず、午後4時にスタートするレースの第1スティントを担当することになった。だが、驚くことに、彼はそれから翌日の午前4時26分まで、運転席を降りなかったのだ。この時、キネッティは3周のリードを築いていた。

しかし、セルスドン男爵がコースに出てから間もなく、体調不良により運転続行が困難になると、キネッティは再びマシンに乗りレースに戻り、それからゴールまで走り続けた。結局、彼は23時間もの間、1人で運転したと伝えられている。しかもその多くの時間、彼は滑り出したクラッチと格闘しなければならなかった。

これがル・マンにおけるフェラーリの初勝利となった。V12エンジンがル・マンで勝ったのもこれが初めてだ。さらに、わずか2.0ℓというこのクルマの排気量は、ル・マンで優勝した最も小さなエンジンという記録を2015年まで保持していた。その後、1950年代から60年代に掛けてフェラーリは8度のル・マン優勝を成し遂げるが、すべてはこのレースから始まったのだ。

だが、キネッティはまだ満足しなかった。

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