「最も黒い物質」で塗られたBMW X6 フランクフルトで展示へ

公開 : 2019.08.29 10:20  更新 : 2019.08.30 18:55

光をほとんど反射しないベンタブラックという物質で塗られた新型BMW X6が、フランクフルト・モーターショーで公開されます。見る人は3次元の感覚を失い、2次元で描かれているように感じるそうです。

世界で最も黒いBMW X6

BMWは、第3世代となる新型X6のシルエットを際立たせるため、真っ黒に塗られたワンオフのX6をフランクフルト・モーターショーに展示すると発表。その画像を先行公開した。

この漆黒のX6は、単なる黒い塗装が施されているわけではない。人工の最も黒い物質として世界記録に認定された「ベンタブラック(Vantablack)」でコーティングされているのだ。

2次元のように見える?
2次元のように見える?    BMW

英国ニューヘブンにあるサリー・ナノシステムズが開発を進めるこのベンタブラックは、実質的に全ての入射光を吸収し、ほとんど光を反射しないため、3次元の物体にこれを塗ると2次元のように見える。そのため、本来であれば「自動車の塗装には適さないペイント」であるとBMWは言っている。

それではなぜ、新型X6にこのベンタブラックを塗布したのか? X6のデザイン責任者を務めたフセイン・アル・アターは次のように述べている。「社内で、われわれはX6をしばしば “ビースト(野獣)” と言い表すことがあります。それがすべてを物語っていると思います」

「ベンタブラック VBx2(ベンタブラックを大きな物体に施すため、スプレー状にして吹き付ける方法)によるフィニッシュは、X6のそんな野獣性を強調し、威嚇的に見せる効果があります。さらに言えば、X6はBMWのラインナップにおいて、常に最も挑戦的で、攻撃的なモデルでした。それをこれまで以上に強調したら、見る人の心を魅了するのではないかと考えたのです」

光が当たると反射せず吸収

ベンタブラックの「ベンタ(Vanta)」とは、Vertically Aligned NanoTube Arrays(垂直に並べられたナノチューブの配列)の頭文字を取ったもの。つまり微細なカーボンのチューブの集合体という構造になっている。

各ナノチューブの直径は約20ナノメートル(平均的な髪の毛の1/3500の細さ)で、長さは約14ミクロン〜約50ミクロン程度。このX6のボディには、1平方センチメートルあたり約10億ものナノチューブが含まれているという。この表面に光が当たると、反射するのではなく吸収し、最終的には熱に変換される。

ベンタブラック VBx2をスプレー
ベンタブラック VBx2をスプレー    BMW

この技術は当初、宇宙探査のために開発された。反射率が非常に低く色褪せないという特性は、アルミニウムのコーティングや光学機器の感度向上などに役立つ。

サリー・ナノシステムズ創設者のベン・ジェンセンは、次のように述べている。「わたしたちはこれまで、様々な自動車メーカーによる多くの依頼を断ってきました。今回引き受けたのは、BMW X6の独特で印象的なデザインなら、このアイディアを楽しめると思ったからです」

可視光の最大99.965%を吸収するという同社のベンタブラックを使ったペイントは、2014年に発表された。ジェンセンによれば、このペイントは「見る人が3次元の感覚をまったく失ってしまうため」実際に路上を走る市販モデルには適さないだろうとのことだ。

ベンタブラックで塗られたX6は、9月10日(現地時間)に開幕するフランクフルト・モーターショーで、市販モデルの新型X6と共に展示される予定だ。

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