大型SUVらしからぬ加速力 テスラ・モデルXロングレンジに試乗

公開 : 2019.10.04 09:50

実用性は高いがダイナミクス性能で及ばず

モデルXのダイナミクス性能は際立ったものではないが、車重が2439kgもあるから、物理的に仕方ないだろう。重心が低くサスペンションも引き締まっており、コーナリング時のボディ制御は称賛に値する。一方でステアリングフィールは極めて希薄で、人工的な操舵感は実際的ではない。

結果、コーナーを速めのスピードで侵入する自信が生まれにくい。かさむ車重は慣性も大きく、ステアリングを素早く切りすぎるとボディは慣性のままに引っ張られそうになる。アンダーステアはそれほど酷くなく簡単に修正も可能だとはいえ、コーナリングスピードは間違えない方が良いだろう。

テスラ・モデルXロングレンジ
テスラ・モデルXロングレンジ

エンジン音や排気音がしないぶん、タイヤのグリップ限界が近づくと、スキール音は聞き取ることができる。その点でのコミュニケーション性は良いともいえるが、カーブへの進入時はしっかり減速し、直線が見えてからスロットルを踏み込む、という運転が適している。

SUVとしての実用性は高い。インテリアは充分に広く、3列目に大人2人を乗せても短距離なら快適にドライブも可能。素材の質感で不満な部分も見受けられるが、17インチの大画面タッチモニターは視覚的にもスマート。操作性も良い。ステアリングホイールでエアコンの温度や風量の調節ができる点は、賢い解決策だといえる。

オートパイロットは、完全な自律運転システムではないようだ。自動的に車線変更を実行するアダプティブ・クルーズコントロールも、英国の道路環境では適切に機能できなかった。走行車両が多い状態は得意ではないらしく、最終的には通常のクルーズコントロールを使用することになった。

恐らくカリフォルニアの広々とした高速道路なら有効なのだろう。英国の道路環境では、まだ実用レベルではないと感じた。

テスラの急速充電器が側にあるのなら

テスラ・モデルXはEVのSUVとして、その価格に見合った優れたダイナミクス性能や快適性を備えているとはいいにくい。クルマとして完成度は、ジャガーIペイスメルセデス・ベンツEQCアウディEQCトロンの方に分がある。

最大の魅力は、テスラ社のスーパーチャージャーが利用できる点にある。クルマの仕上がり以上に、英国の場合は急速充電ネットワークが素晴らしい。一度アカウントを設定すれば、コネクターをつなぐだけという抜群の使いやすさで、モデルXの100kWhバッテリーも短時間で充電できる。1時間の充電で482km分の電気を蓄えられる。

テスラ・モデルXロングレンジ
テスラ・モデルXロングレンジ

ナビゲーション・システムも良い。バッテリーの残量が少なくなると、自動的にスーパーチャージャーへと案内してくれる。充電時間や到着予定時間、バッテリーの残存量も予測する。それにモデルXには、他の充電器にも接続できるアダプターも付いてくる。

もしスーパーチャージャーが自宅のそばにあるのなら、モデルXはとても便利な長距離移動手段となるだろう。しかもその数は英国では増え続けているのだ。

テスラ・モデルXロングレンジのスペック

価格:8万6550ポンド(1168万円)/英国では3500ポンド(47万円)の補助金あり
全長:5037mm
全幅:2070mm
全高:1626mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:4.4秒
航続距離:506km(WLTP)
CO2排出量:0g/km
乾燥重量:1320kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター(フロント)/インダクションモーター(リア)
バッテリー:100kWh
最高出力:420ps
最大トルク:67.2kg-m
ギアボックス:シングルスピード・リダクションギア

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