大型SUVらしからぬ加速力 テスラ・モデルXロングレンジに試乗

公開 : 2019.10.04 09:50

サスペンションやモーターに僅かなアップデートが加えられた、テスラ製大型SUVとなるモデルX。航続距離も伸び、高級EVの傑作モデルとしての評価を高めることはできるのでしょうか。英国で評価しました。

大型SUVらしからぬ加速力

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

テスラは大型SUVのモデルXへ僅かなアップデートを加えた。変更点は野心的なボディデザインの内側に隠されているから、一見すると変化はわかりにくい。

最も大きな変更点はドライブトレイン。永久磁石同期モーターの冷却系や潤滑系、ギアの設計を見直すことで効率を高めたとしている。モーターのエネルギー効率は93%へ改善し、とても優れた数値だといえるだろう。航続距離も伸びて、WLTPテストで506kmの走行が可能。最高出力は420ps、最大トルクも67.2kg-mへと強化されている。

テスラ・モデルXロングレンジ
テスラ・モデルXロングレンジ

エアサスペンションもアップデートを受けている。アダプティブダンパーを装備し、ソフトウエアも書き換えられた。路面からの入力や走行スピード、ドライバーの操作などに対するダンパーの動きを正確に予見し、対応できるという。

またテスラだけあって、新しいソフトウェアの配信準備が整えば、ワイヤレスでダウンロードしインストール可能となっている。賢い方法だ。充電スピードも高速化され、テスラ社のスーパーチャージャー(急速充電器)につなげは、以前よりも50%ほど充電時間を短縮できるとのこと。

大型SUVのテスラ・モデルXは期待以上に速い。テスラが生み出すクルマは往々にして速いが、アクセルペダルを踏みつけると、少し子供じみた満足感が得られるほど。沿道の人からすると、少し気味悪く感じられるかもしれない。相撲取りなのに100mダッシュで優勝するほど足が速いようなものだ。

少し大げさとはいえ、それくらいの鮮烈さはある。0-96km/h加速は4.4秒だが、モデルXの「ロングレンジ」は最速グレードではない。更に上の「パフォーマンス」なら、2.7秒で同じ速度に達する。

ぎこちないサスペンション

加えてこのパワートレインは、朝飯前のように極めて滑らかに加速する。走り出しは落ち着いたもので、回生ブレーキの特有の扱い方さえ身につければ、緩やかに減速し停止するというドライビングスタイルにもすぐに慣れる。

回生ブレーキの効きの強さには2段階の設定があるが、非常に強力に減速するモードと、ほとんどコースティング状態のモードとの間に、中間程度の強さの設定があるとなお良いだろう。

テスラ・モデルXロングレンジ
テスラ・モデルXロングレンジ

パワートレインからの感動が落ち着くと、モデルXのラグジュアリーSUVとしての素性も見えてくる。サスペンションに調整を受けてはいるものの、依然として8万6550ポンド(1168万円)もするクルマの挙動ではないと思う。

サスペンションの仕事ぶりはぎこちなく、路面の起伏やザラつきを粗野に車内に伝えてしまう。ガラスのように滑らかな路面でない限り、ヘッドレストに接する頭部は揺れ続け、落ち着くことがない。モデルXのライバルとなるメルセデス・ベンツEQCジャガーIペース、アウディEトロンなら、遥かに優れた乗り心地を味わえる。

同じことが高速走行時にも当てはまる。高速道路だから路面は平滑になり揺れは減るものの、車内と外界との隔離感という点では、ライバルと明確な差がある。風切り音は静かだが、タイヤの転がり音にはがっかりしてしまった。ただしエンジンが備わらないから、静かなクルージング時の感覚は、どんなハイエンドSUVも備えていないものではある。

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