【60年間の歴史に幕】「売り方」変えるホンダ 新型フィットで問われる「感性価値」の実力

公開 : 2020.02.19 17:50  更新 : 2021.10.09 23:55

「ここちよさ展」プロダクトアウト型?

結果としては、想像していたより、面白い体験であり、自分自身のモノに対する見方が再確認できた。

ホンダのモノづくりの考え方を、ユーザー自身がダイレクトに感じ取れる良い機会だ。

筆者としても、端的にとても楽しかった。

ただし、この体験がそのまま、新型フィットの購入動機になるかどうかは、人によって違いがあるのは当然だ。

つまり、「ここちよさ展」は、ユーザー目線になっているように見えるが、実はホンダ側のプロダクトアウトによる市場調査の範疇を超えていない、と思う。

「ここちよさ展」を体験したうえで、展示車の新型フィットの外観をみて、ドアを開けて運転席に座り、助手席に座り、後席に座り、リアハッチを開け、ついでにボンネットを開けてみた。

こうして一連の動きの中で、仮に「このクルマは、ここちよいですか?」と聞かれたとして、即座に「はい」といえる気分にはならなかった。

あくまでも、個人的な見解だが、これが正直な感想だ。

「ここちよさ展」では、聴覚、視覚、嗅覚、触覚、そして味覚と、それぞれの感覚に対して個別体験することで、ここちよさを、かなり短時間で自覚することができた。

一方で、クルマでは、動いている状態で五感を使わないと、ここちよさが見えてこないものだと、強く思った。

新体制「感性価値」が業績に結びつく?

走ってもらえば、違いが分かります。

自動車メーカーの開発者が、昔からよく使うフレーズだ。

特に、走りをウリにしている、スバルマツダ、そしてホンダの開発者が使うことが多い。数値によって定量化できない感覚。各社が「走るよろこび」と表現する、人間の感性に訴える領域だ。

「走るよろこび」を、より広い視野で考え直したのが、新型フィットでいる「ここちよさ」なのだと思う。

「ここちよさ」は、けっして、新型フィットだけの商品企画コンセプトではない。本田技術研究所には「感性価値」の研究チームがあり、この数年間での研究成果が新型フィットに盛り込まれている。ホンダの「感性価値」は、新型フィット以降に発売される新型車にも当然、反映される。

とはいえ、「感性価値」で実績を出すのは極めて難しい。昔ながらのホンダ車は、開発者がクルマ作りを深堀りすることで、偶発的に「感性価値」が生まれてきたからだ。

クルマに限らず、感性、味わい、そして「ここちよさ」は本来、作ろうと思って作れるものではない。

そうした極めて難しい領域に、新型フィットが挑む。

ホンダ四輪新体制のもと、「感性価値」による新たなるブランド戦略、商品戦略によって次世代ホンダらしいクルマが生まれることを期待したい。

記事に関わった人々

  • 桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?

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