【メルセデス・ベンツ vs BMW】コンパクトモデルぞくぞく投入の舞台裏 商品&販売戦略やや違う

公開 : 2020.05.27 05:50  更新 : 2021.10.22 10:15

やや違う メルセデス/BMWの販売姿勢

今の日本国内の売り方について、メルセデス・ベンツの販売店は次のようにコメントした。

「かつてのメルセデス・ベンツには、高価格車のイメージが強かったです」(メルセデス・ベンツ販売店)

バブル経済期、「六本木のカローラ」と呼ばれていたE30型BMW 3シリーズ。
バブル経済期、「六本木のカローラ」と呼ばれていたE30型BMW 3シリーズ。    BMW

「景気の良い時代は、プレミアムブランドの性格が際立ち、中古車価格も高まりました。そうなるとお客様も、愛車を好条件で売却できます」

「ところが1990年代の中盤になると、次第に景気が悪化してきました」

「その中で大量な販売をねらうと、高級感が裏目に出てしまいます。『ベンツは600万円を超えるクルマばかりでしょ』などと言われ、最初から敬遠されました」

「要は敷居が高すぎるので、近年はAクラス/GLA/CLA/さらにAクラスセダンという具合に、コンパクトな車種に力を入れるようになったのです」

2019年の国内販売台数は520万台で、バブル絶頂期だった1990年の778万台に比べると67%にとどまる。

ところがメルセデス・ベンツの国内登録台数は、1990年の170%に増えた。

メルセデス・ベンツは、バブル経済期の方がたくさん売れていたように思えるが、実際には今の売れ行きは当時の2倍近くに達する。

BMWも1990年の130%になる。

BMWの販売店からは別の意見が

プレミアムブランドが景気の悪化に逆行して売れ行きを伸ばすには、コンパクトな車種を充実させて価格帯を下側へ広げなければならない。

メルセデス・ベンツは、AクラスやGLAを軸にして、それをおこなった。

メルセデス・ベンツGLA
メルセデス・ベンツGLA    メルセデス・ベンツ

メルセデス・ベンツの国内販売推移を見ると、2010年は3万台少々だったが、2013年初頭に現行Aクラスを加えると5万台を上まわった。

2014年にはGLAも投入して6万台を超えている。このほかSUVのラインナップも充実させて、急成長を遂げた。

一方、BMWの販売店からは別の意見が聞かれる。

「BMWは2シリーズのアクティブツアラーとグランツアラー、SUVのX1など、日本で販売しやすいコンパクトな前輪駆動車を投入して売れ行きも伸びています」(BMW販売店)

「ただし、これらは慎重に扱いたいですね。BMWのブランドイメージはあくまでも運転の楽しさにあります。それを訴求できるのは、以前と同じく後輪駆動の3シリーズや5シリーズになるからです」

国内の売れ行きも、BMWで登録台数の最も多い車種は3シリーズで、2シリーズやX1はそれ以下になる。

メルセデス・ベンツとBMWでは考え方が異なる。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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