【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#31 年収300万円のフェラーリ・オーナーと再会!

公開 : 2026.04.03 12:05

自動車はロマンだ! モータージャーナリストであり大乗フェラーリ教開祖の顔を持つ清水草一が『最後の自動車ロマン』をテーマに執筆する、隔週金曜日掲載の連載です。第31回は『年収300万円のフェラーリ・オーナーと再会!』を語ります。

年収300万円台から始めるフェラーリ購入計画!

光陰矢の如しと言う。

わずか10年ほど前まで、中古フェラーリは、頑張れば日本の一般大衆でも買うことができた。たとえば1000万円のF355を、頭金250万円+750万円のローンで狙うことができた。750万円の自動車ローンは、年収500万円あれば組めるのである。

わずか10年ほど前まで、中古フェラーリは、頑張れば日本の一般大衆でも買うことができた!
わずか10年ほど前まで、中古フェラーリは、頑張れば日本の一般大衆でも買うことができた!    フォッケウルフ

私は約30年前、自らの初フェラーリ購入記をまとめた『そのフェラーリください!』(講談社)なる本を刊行し、フェラーリを買えばシアワセになれる! を教義とする『大乗(だいじょう)フェラーリ教』の布教を始めたが、その活動のもうひとつのエポックとなったのは、17年前に出た『年収300万円台から始めるフェラーリ購入計画』(ネコ・パブリッシング)というムックだった。

時は2009年、リーマンショックの翌年。全世界が不況のドン底に喘ぎ、中古フェラーリ相場も大きく下落していた。

しかし多くの庶民は、もともと慎ましく堅実に生きているので、不況だろうがなんだろうが、それほどの影響はない。逆に、中古フェラーリを手に入れる絶好のチャンスだった(今振り返ればですが)。

年収300万円でフェラーリを買った!

そんな時、中古フェラーリ専門店『コーナーストーンズ』に現れたのが、年収300万円の若きサラリーマン、『肉まん君』こと酒井さん(当時26歳)だった。

彼は年収300万円でフェラーリを買った。1994年式、走行距離4万キロの348スパイダーである。総額640万円。まさに維新回天の瞬間だった。

2009年にネコ・パブリッシングから刊行された『年収300万円台から始めるフェラーリ購入計画』(ちなみに当記事担当が編集を担当しました)。
2009年にネコ・パブリッシングから刊行された『年収300万円台から始めるフェラーリ購入計画』(ちなみに当記事担当が編集を担当しました)。    平井大介

「お店でフェラーリを見て、エノテンさん(コーナーストーンズ代表・榎本修氏)に『コレはアナタにも買えますよ』と言われた瞬間から、買わないという選択肢は完全になくなったんです」と、当時酒井さんは語っている。

安くてカロリーのある肉まんばっかり食べて貯めた虎の子の240万円を頭金に、残り400万円を7年ローン。支払い額は月々3万7000円、ボーナス時13万円。『年収300万円台から始めるフェラーリ購入計画』には、その詳細が記されていた。

年収300万円のフェラーリ・オーナーの出現は、大きな反響をもたらし(ごく一部の層にですが……)、その後、低年収フェラーリ・オーナーを続々と誕生させた。それは、当時の自動車ラスト・ロマンそのものだった!

肉まん君と久しぶりに再会!

その酒井さんに、『コーナーストーンズ』で久しぶりに再会した。

酒井さん「清水先生、ご無沙汰してます」

中古フェラーリ専門店『コーナーストーンズ』で再会した酒井君。
中古フェラーリ専門店『コーナーストーンズ』で再会した酒井君。    清水草一

オレ「うおおおお、酒井くん! なんだか髪の毛が増えたみたいだね!」

酒井「ちょっと伸ばしただけです(笑)」

オレ「それにしても久しぶりだなぁ」

酒井「そうですね。僕も43歳になりましたから」

オレ「ええっ!? そんなに!」

26歳の若者が43歳になっている。それだけの歳月が流れたのだ。

その間に、というかここ10年ほどで、中古フェラーリ相場は急上昇し、ぶちゃけ約2倍に。一方日本人の平均収入はほとんど上がっていないので、もはや庶民がフェラーリを買うなどというロマンは雲散霧消、どこにも存在しない。

買えるのはせいぜい、フェラーリ製エンジンを積んだ先代マセラティクアトロポルテ前期型(100万円台からアリ)くらいのものである。

この16年間、酒井くんはどうしていたのか。あのフェラーリ348スパイダーはどうなったのか。そして今はどんなカーライフを送っているのか!? それを聞かずばなるまい。

(つづく/隔週金曜日掲載、次回は4月17日金曜日公開予定です)

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    清水草一

    Souichi Shimizu

    1962年生まれ。慶応義塾大学卒業後、集英社で編集者して活躍した後、フリーランスのモータージャーナリストに。フェラーリの魅力を広めるべく『大乗フェラーリ教開祖』としても活動し、中古フェラーリを10台以上乗り継いでいる。多くの輸入中古車も乗り継ぎ、現在はプジョー508を所有する。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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