【なぜCMにタレント起用しない?】マツダの独自戦略 その意図とは? 実は昔は……

公開 : 2020.06.22 10:02  更新 : 2020.06.22 10:29

クルマのCM タレント採用の意味

マツダは今年1月30日に創立100周年を迎えた。

これを機に発行された、マツダ百年史エピソード編のエピソードNo18。「一躍いざ、業界トップの座へ~宣伝キャラバン(戦後編)」

マツダR360クーペ(1963年)
マツダR360クーペ(1963年)    マツダ

それによると、マツダの前身である東洋工業は、業界初の2t積み3輪トラック「CTL1型」で1952年、高速道路がない時代の広島~東京間を、給油中もエンジンを止めずに31時間16分でノンストップ走破するという破天荒な販売促進キャンペーンを成功させた。

翌53年には、当時の国民的スターだった喜劇役者の柳家金語楼が広島から東京まで10日間かけて自らCTL1を運転するという企画を実行し、全国各地の新聞が大きく取り上げるなど、こちらも大成功を収めた。

この7年後の1960年、東洋工業は「R360クーペ」で四輪市場に初参入する。

こうした日本の自動車産業創成期の出来事を振り返ると、有名タレントを新車の宣伝広告に起用する最大の理由は、第一に企業とブランドの知名度アップ。そして、商品の認知度を上げてから販売。

有名タレントに対する親近感や信頼感が、商品の売り上げを左右する。そのため、逆の効果として、タレントが不祥事等を起こした場合、そのイメージが企業やブランドに影響を及ぼす。

こうしたCMという手法の成り立ちが、今回各種資料をまとめながら、改めてわかった気がする。

では、なぜマツダは近年、新車CMや企業CMにタレントを起用しなくなったのか?

マツダがCMにタレント起用せぬ理由

では、なぜマツダは近年、新車CMや企業CMにタレントを起用しなくなったのか?

マツダ本社に直接取材したところ、回答は次の通りだった。

マツダがメディア用に配布する写真もまた、説明的なカットよりも、街で人物と絡めて撮影した抽象的なイメージ寄りのものが多い。
マツダがメディア用に配布する写真もまた、説明的なカットよりも、街で人物と絡めて撮影した抽象的なイメージ寄りのものが多い。    マツダ

「現在のマツダは、『ご自身の価値観を持ち、自分の選択に自信を持っておられる方』を想定し、価値観を切り口にしてお客様像を想定しています」

「タレントを起用すると、そのタレントのイメージに引っ張られてしまい、お客様の間口を狭めてしまう可能性があるため、現在ではタレントを起用していません」

マツダのコメントからは、マツダのマツダ・ブランドに対する自信が感じられる。

マツダが第6世代と呼ぶ、2012年登場の「CX-5」から、マツダはそれまでのモデルごとの広告宣伝活動から、企業価値を高めるブランド戦略へと大きく舵を取っている。

いまのユーザーは、CX-5だから、CX-30だから、といった各モデルのイメージを優先してマツダを選ぶというワケでもなさそうだ。

ユーザーは、「マツダだから」マツダを選ぶ傾向が強まった。

マツダが最近、CMにタレントを起用しない理由。

それは、マツダが、マツダらしく未来に向かって歩むべき方向をしっかりと見定めているからに他ならない。

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