まだ独立系企業だった頃のAMG 1982年の英国デビューを振り返る 歴史アーカイブ

公開 : 2025.12.23 17:05

1982年、まだメルセデス・ベンツに買収される前のAMGは、ひっそりと英国デビューを果たします。AUTOCAR英国編集部は500 SECなどに試乗し、その実力を確かめていました。当時の記事を振り返ります。

1980年代のAMG車のレビューを振り返る

1982年秋、AMGが英国にひっそりと上陸したときのことを振り返りたい。チェシャー州ウィルムズローのストラットンズが唯一の販売代理店となった。当時のAUTOCAR誌はわずか50個の英単語を割いて、AMGを「メルセデス・ベンツ車のカスタマイズと性能向上を行うドイツのスタイリング&チューニング会社」と淡泊に紹介した。

実はその年、AUTOCAR英国編集部はすでにAMG車を体験していた。サリー州バグショットにあるディーラー、ダンカン・ハミルトンから借りた500 SECである。このディーラーは、リアル(ホイール)やコニ(サスペンション)など、さまざまなドイツ製アフターパーツを販売していた。

AMG 500 SEC
AMG 500 SEC

アルマイト処理されたクロームパーツ、ボディ同色のアルミホイール、ローダウンされた強化サスペンション、サイドスカート、チンスポイラー、トランクリッドスポイラー、そしてトランクリッドのAMGバッジ(15ポンドの有料オプション)を備えたこの大きなクーペは、ブロンズ色で「低く、威圧的で、力強い」印象を与えていた。

ドライビングも非常に優秀だった。

「ハンドリングは明らかに向上している。標準車よりもボディロールがはるかに少なく、コーナーを軽々とこなし、グッドイヤーNCTタイヤでより強く路面に食いつきながらも、高級車らしい乗り心地を損なわない」と、当時のAUTOCARは評価した。

真価を発揮した300 CE

しかし、AMGの本質を理解できたのは1989年、ストラットンズから届いた直列6気筒の300 CEクーペに試乗したときのことだった。

この時、AMGは独立系企業でありながらメルセデス・ベンツと緊密に連携し、「重要な技術情報へのアクセス権と、AMGの近代的かつ印象的な技術設備をフル活用する120名のスタッフ」を有していた。ここにある技術設備とは、特製シリンダーヘッドを加工するCNCマシン、風洞、ダイナモメーターを備えたコンピューター制御のテスト施設などのことだ。

AMG 300 CE
AMG 300 CE

ただし、英国顧客向け車両の改造は依然ストラットンズが担当していた。

「エンジンは完成品で供給されるが、ボディワーク、内装、サスペンションはストラットンズで施工される」

試乗車であるAMG 300 CEのボンネット下に収まる『M103』型6気筒エンジンは一見ノーマルに見えたが、実際には大幅に手が加えられていた。

「ロングストロークのクランクシャフトとボアアップされたブロックにより排気量は3205ccに増加。新しい軽量ピストンにより圧縮比は9.2から10.1に向上した」

「シリンダーヘッドの吸排気効率は改善され、AMG独自の特殊形状クランクシャフトによりバルブの開度と作動時間が拡大。さらに、高性能エグゾーストシステムは燃焼ガスの流れを促進しつつ、パワーを損なわない設計となっている」

その結果、出力は190ps/5700rpmから248ps/5750rpmに、トルクは26.5kg-m/4400rpmから33.0kg-m/4500rpmに向上。これにより300 CEは、標準車より0-160km/h加速が約5秒短縮された。

記事に関わった人々

  • 執筆

    クリス・カルマー

    Kris Culmer

    役職:主任副編集長
    AUTOCARのオンラインおよび印刷版で公開されるすべての記事の編集と事実確認を担当している。自動車業界に関する報道の経験は8年以上になる。ニュースやレビューも頻繁に寄稿しており、専門分野はモータースポーツ。F1ドライバーへの取材経験もある。また、歴史に強い関心を持ち、1895年まで遡る AUTOCAR誌 のアーカイブの管理も担当している。これまで運転した中で最高のクルマは、BMW M2。その他、スバルBRZ、トヨタGR86、マツダMX-5など、パワーに頼りすぎない軽量車も好き。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事