【2CVとDSの間に生まれた優等生】シトロエンGS 187万台のビッグヒット 前編

公開 : 2020.08.08 07:20  更新 : 2021.03.05 21:42

未来的なDSと、古典的な2CVの間を埋めるべく登場したGS。シトロエンを救うことになったコンパクト・モデルの誕生から50年。初期モデルのピュアなデザインを改めて見ると、知的な印象さすら感じさせます。

涙を浮かべて喜んだGSの登場

text:Jon Pressnell(ジョン・プレスネル)
photo:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)/Giles Chapman Archive(ジャイルズ・チャップマン・アーカイブ)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
定年を迎えたセールスマンが、ソファーに深く腰を下ろす。「GS発表の日を今でも覚えています。ディーラーのスタッフはうれしさのあまり、涙を浮かべて泣いていました」 思わず自分の顔がほころんだ。

シトロエンは市場に耳を傾け、長い間われわれが求めていたクルマを生み出してくれたのです」 とても心に残る話だ。筆者がシトロエンGSへ強い興味を持つ、きっかけとなった。

シトロエンGS(1970年〜1979年)
シトロエンGS(1970年〜1979年)

ディーラーの要望へ応えた新モデルとはいえ、気持ちの良いスタートは切れなかった。エンジンの排気量は1015ccで、明らかに力不足。運転には癖があり、燃費も満足のいく数字ではなかった。当時のAUTOCARの試乗では、8.2km/Lを残している。

そもそも、信頼性に問題があった。GSがディーラーを本当に救えたのは、1972年に1220ccエンジン・モデルが登場してからだったといわれている。かといって、初期の1970年製GSはスクラップが相当だとは思えない。

そのセールスマンは、GSが登場する前のシトロエンを端的にまとめてくれた。自己満足、無能力、思い上がり。なかなか辛らつだ。

シトロエンをそんな姿勢にした理由の1つに、ベーシックな2CVのヒットがあった。量産車として可能な限りのハイテクを搭載した、DSという異端児も外せない。

このシトロエン2CVとDSの間には、602ccエンジンを搭載した2CVの焼き直しといえるアミが存在してはいた。そして装備を簡素化させたIDも。

ルノープジョーに奪われたシェア

ルノーは、コンパクトカーのドーフィンを1956年に発売する。シトロエンはその対抗馬としてのアミのリリースに、5年もの時間を必要とした。

続いて2CVより優れたクルマとして、ルノーはR4、キャトルを1961年に発売。2CVの設計をコピーしたとして、国有化企業を相手にした法廷争いを考えさせるほど、シトロエンには衝撃を与えた。

シトロエンGS(1970年〜1979年)
シトロエンGS(1970年〜1979年)

シトロエンは、アミでしばらくの販売をしのいだ。むしろフランス市場では、ベストセラーになるほど売れた。しかしシャルル・ド・ゴールがフランスの大統領に選ばれる頃には、2CVとDSとのギャップを埋めるには不十分なクルマになっていた。

1964年には、プジョーが204を発表。スマートなデザインと、時代にふさわしい技術を搭載し、アミを超える内容は明らかだった。翌年には、ルノーからR16が登場。シトロエンIDやDSより手頃で、高い人気を集めた。

世界的に、経済が成長を続けていた時代。204もR16も飛ぶように売れ、街に溢れた。一方で、シトロエンからすればライバル・ブランドにシェアを奪われた状況。ディーラーの空気は良くなかった。

シトロエンは驚くことに、第二次大戦前のモデル、トラクシオン・アバンがR16にコピーされたとして、ルノーへ法廷での争いを迫った。当時するべきは、市民が欲しいと思える新しい中型車の開発だったのだが。

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