アキュラ RLX アドバンス・パッケージ

公開 : 2014.01.29 23:50  更新 : 2017.05.29 19:59

■どんなクルマ?

2013年より登場した、アキュラのフラッグシップ・セダンがRLXだ。アキュラとは北米を中心に展開されるホンダの高級ブランドで、過去には日本国内で発売されたインテグラやアコード、NSXが同ブランドから販売された。当初、RLXはFFモデルのみだったが、2014年よりハイブリッド・システムを組み合わせたSH-AWDが追加された。

このRLXは、名称のとおり従来から存在していたアキュラRLの進化版である。そしてアキュラRLは代々ホンダ・レジェンドの兄弟車であり、このRLXをベースにした新型ホンダ・レジェンドは、2014年秋にも日本で販売される。発表直後ということもあってRLXのSH-AWDモデルへの試乗は適わなかったが、ベースとなるFF車にアメリカ・ロサンゼルスで乗ることができた。

先代モデルとなるRLは、アキュラ(=ホンダ)の持つ最新テクノロジーを搭載した高級セダンという位置づけだったが、新世代RLXとなってもそれは変わらない。ハイブリッド・システム非搭載のFFモデルといっても、気筒休止機構を備えた直噴V6エンジンや、P-AWS(プレシジョン・オールホイールステア)と呼ばれる四輪操舵システムなどを搭載。大柄なボディからは想像できないほどのスポーティな走りを実現している。

■どんな感じ?

今回、試乗したのはFFモデルの最上位グレードとなるアドバンス・パッケージ。エンジンやトランスミッションといったパワートレーン関係は同一だが、内装の仕立てやサスペンションの味付け、またオーディオなどの装備が充実している。価格はベースモデルに対してプラス1万ドル弱となる。

試乗の舞台となったのはアメリカ・ロサンゼルス。ダウンタウンから約40分ほど離れた閑静な街をベースに、フリーウェイ(高速道路)やワインディング路など、数日間で約600マイル(約1000km)を走りまわった。

全長4982×全幅1890×全高1465mmの車体はアメリカという土地柄を考えても、やや大きいと感じさせるボディサイズ。外観デザインは、クールな印象を与える定番のアキュラ・マスクだが、前後のライトにLEDを多用するなどして先進性をアピール。夜間走行時には、ほかの車種とは明らかに異なる表情を見せてくれる。

競合他車がFRを採用するこのカテゴリーにおいて、アキュラ=ホンダがFFレイアウトを採用するうえで優位性のひとつが、室内空間の広さだ。FFとはいっても四輪操舵システムが装備され、また別グレードにSH-AWDモデルを展開するが、それでも後席の居住空間は圧倒的に広い。やや背もたれが寝すぎている感じはあるけれど、頭上空間や前席ヘッドレストまでの距離はたっぷりととられている。

それでもよほど運転が苦手な御仁でなければ、RLXのもっとも快適と思えるポジションは運転席だ。肉厚がたっぷりととられたレザーシートは高級オフィスのチェアのようだし、実際に走らせてみても、センター付近から応答性のいいステアリングや、シフトレバーやウインカーといったカチカチと小気味良い使用感の操作系もあって、ステレオタイプな「高級セダン」っぽい運転感覚とは明らかに異なる。

注目のP-AWSは、ホンダが長年かけて研究を行ってきた4WSシステムの進化版。これまでの4WSと決定的に異なる点は、リアのトーコントロールアームを電動伸縮式としたこと。左右リアタイヤのトーをそれぞれ電動調整することができるため、従来のようにコーナリング時には前後同位相・逆位相を使い分けるだけでなく、左右をトーインとして直進安定性を高める、といったような制御も可能になった。

そしてRLXの良い意味でフラッグシップ・セダンらしくない走行性は、ワインディングを走るといっそう顕著になる。トランスミッションは通常の6速A/Tだが、ステアリング裏に装備されたパドルシフトによりマニュアル操作も可能。プラス変速操作となる右手を軽く引けば、瞬間的な変速が行える。

エンジンはホンダ自慢の3.5ℓ i-VTEC。6500rpmで310psを発揮する強心臓ぶりで、約1.8トンもの巨体を軽々と加速させる。エンジン回転と速度がシンクロして上昇していく様や、ステアリングの動きに合わせてノーズが軽く内側を向くハンドリングは、まるで1.5〜2ℓのスポーツセダンのようだ。

■「買い」か?

最初に記したように、このアキュラRLXは2014年秋にもホンダ・レジェンドとして国内販売されることが(ほぼ)決まっている。ただし、おそらくその際はSH-AWDを搭載するハイブリッド・モデルのみとなる可能性が高い。

2014年1月現在、ホンダが日本国内で販売しているセダンはアコード・ハイブリッド1車種のみ。このアコードとて、北米ではガソリンエンジン車も販売されているけれど国内導入は見送られた。そして2014年のうちに、最上級のレジェンド・ハイブリッド、そしてコンパクトサイズのハイブリッド・セダン(おそらくシティの名が復活するだろう)というラインナップを形成すると思われる。

日本国内のラインナップに再びセダンが揃うのは嬉しいけれど、ホンダが長年にわたって開発を進めてきた4WSの進化版、P-AWSを味わうことができないのはちょっと残念な気もする。ハイブリッドだけが新時代の技術ではないし、徹底的に磨き上げられたFFフラッグシップ・セダンには、独自の魅力が確かにあるからだ。

(佐橋健太郎)

アキュラ RLX アドバンス・パッケージ

価格 $60,450(623万円)
燃費 10.2km/ℓ
CO2排出量 NA
乾燥重量 1813kg
エンジン V型6気筒3471cc
最高出力 310hp/6500rpm
最大トルク 51.4kg-m/4500rpm
ギアボックス 6速オートマティック

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