次期ポルシェ『718』にガソリンエンジン搭載へ EV用プラットフォームを「ミドシップ」向けに大幅改良

公開 : 2025.12.16 07:25

ポルシェは次期『718』のEV計画を見直し、ガソリンエンジン搭載モデルの投入を検討しています。情報によると、EV需要の低迷と規制緩和を受け、現在はEV専用プラットフォームの再設計に取り組んでいるとのこと。

EV計画見直し

ポルシェは、次世代モデルの『718ボクスター』および『718ケイマン』をEV専用とする方針を転換し、プラットフォームをガソリンエンジンに対応させるために改良を進めている。

4代目ボクスター/ケイマンの生産は先月終了し、新型EVが年内に登場予定だった。しかし、EV需要が鈍化する中、ポルシェは損失の大きかった複数のEV計画を縮小し、すでに「最上位」グレード(RSおよびGT4 RSとみられる)の販売再開を表明していた。

『718ボクスター』
『718ボクスター』

現在、同社のヴァイザッハ技術センターの関係者がAUTOCARに明かしたところでは、2026年発売予定の次世代モデル向けに開発されたEV専用プラットフォーム『PPEスポーツ』の設計を変更することで、ミドシップエンジン搭載の2車種をラインナップに復帰させる計画だという。

この動きは主要部品の生産効率向上を目的としたもので、ポルシェ史上最も急激なドライブトレイン転換劇の1つである。フィアット500ハイブリッドやメルセデス・ベンツ・ビアノなど、他メーカーも同じような道を歩んだことがある。

ポルシェは戦略を広範囲に見直しており、『マカン』など完全電動化を予定していた他のモデルも、現在では内燃機関搭載バージョンを再投入する見込みだ。

9月に表明された718の「最上位」グレードは、今回明らかになったPPEスポーツ採用車とは別物で、現行世代のRSおよびGT4 RSの改良版と見込まれる。2026年発売予定のEVモデルの上位に位置づけられ、新情報によれば、2020年代後半に登場予定の5代目モデルまでの “つなぎ” として活用されるようだ。

大幅な構造変更

ポルシェの関係者は、5代目で内燃機関を存続させるためには、EVモデルと同等の走行性能を実現しなければならないと強調している。EV用プラットフォームならではの「超低重心」を考慮すると、そのハードルは非常に高い。

これを実現するのは容易ではない。PPEスポーツ・プラットフォームは、高強度のバッテリーパックとフラットフロアを採用しているため、バッテリーを取り除くとボディシェル全体の剛性が大幅に低下する。

『718ボクスター』
『718ボクスター』

そのため、プラットフォームのハードポイントに組み合わせる新たなフロアセクションの開発に焦点を当て、剛性を実質的に回復させようとしている。また、情報によると、再設計されたリアバルクヘッドとサブフレームによってエンジンとトランスミッションを支えることになるという。

しかし、パッケージング上の制約は依然として大きく残っている。特にEV向けの構造にはセンタートンネルがなく、燃料タンク、燃料ライン、排気システムの設置スペースも確保されていないためだ。ガソリンエンジンの搭載を想定していなかった設計のため、完全新規でリアセクションの開発が必要とされているようだ。

ポルシェは以前、自然吸気4.0L水平対向6気筒エンジンが欧州連合(EU)のユーロ7排出ガス規制に適合できないと判断していた。しかし、規制が緩和され、さらに2035年以降のeフューエル免除も認められたことで、ガソリンスポーツカーの商用化が可能になった。

ある上級エンジニアはAUTOCARに、「電動のボクスターとケイマンはニッチ製品になるリスクがありました。ユーロ7で状況が一変したのです」と語った。

新型車に搭載されるエンジンは未定だ。しかし、退任予定のポルシェCEOオリバー・ブルーメ氏が提示した新計画を見る限りでは、2020年に718に導入された4.0L水平対向6気筒エンジンの改良型が有力候補として考えられる。このエンジンはGT4 RSでは最大500psを発生する。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事