至極滑らかなEV 馴染みやすいHV フィアット600と600e(2) 目立った弱点ナシ

公開 : 2025.12.15 18:10

HVかEVを選べる600 500へ通じるボディの可愛さ 広い車内に高めの視点 最高水準に扱いやすい車載機能 乗り心地はソフト側 小気味良いコーナリング 目立った弱点なし UK編集部が試乗

156psを活用するならスポーツ・モード

フィアット500のお兄さん的モデルといえる、600。まずは、バッテリーEVの600eで出発してみよう。最高出力は156psあり、実際に計測したところ、0-100km/h加速8.8秒と充分活発。より鋭いダッシュ力を持つ、同クラスのEVは少なくないが。

ドライブモードは、エコ、ノーマル、スポーツの3種類が用意され、スポーツ・モード時のみフルパワーを常時引き出せる。それ以外では、普通にアクセルペダルを傾けている限り130psへ制限され、80km/hを過ぎた辺りから力不足に思えてくる。

フィアット600 1.2ハイブリッド(英国仕様)
フィアット600 1.2ハイブリッド(英国仕様)

深く踏み込むと、キックダウンスイッチが入り制限は解かれるが、反応は若干唐突。小さなフィアットらしく、市街地をキビキビと走りたい場合、スポーツ1択となるだろう。

アクセルペダルの反応は良好。回生ブレーキはDとBで強さを変えられるものの、パドルでの調整はできず、ワンペダル・ドライブにも対応しない。Dでは効きが弱く、アクセルオフ時に惰性走行で距離を稼げる。ブレーキペダルの反応は、もう少し滑らかでいい。

乗り心地はソフト 小気味良いコーナリング

1.2Lマイルド・ハイブリッドの600の印象は、従来的で馴染みやすい。135ps版は、ステランティス・グループのひと回り大きいモデルも受け持つため、ボディの重さに対し余裕がある印象。101ps版は、活発に走らせると息苦しさを感じがちだった。

6速デュアルクラッチATは、変速の滑らかさが今ひとつ。1.2L 3気筒エンジンは、始動時のノイズが大きめ。洗練度は更に磨けるはず。

フィアット600 1.2ハイブリッド(英国仕様)
フィアット600 1.2ハイブリッド(英国仕様)

パワートレインを問わずグリップ力は高く、ステアリングホイールは軽快に操れ、不安感なく先を急げる。思いの外、小気味良くカーブをこなせる。

サスペンションは適度な締りがあり、ストロークが長め。乗り心地はソフト側だが、姿勢制御は、垂直方向の揺れが巧みに抑えられ、加減速時の前後の揺れも最小限。流れの速い幹線道路や高速道路、凹凸の目立つ区間でも、優れた安定性が頼もしい。

快適性が高いのは600e でも航続は短め

それでも、ドライバーの気持ちを刺激するタイプではない。往年の、ラテン系コンパクト・ハッチバックのような機敏さまでは備わらない。扱いやすく、都会で暮らすおしゃれ好きな現代人との適合性は、高いといえるが。

静寂性は、EVの600eで80km/h時に63dBAと、同クラスでは少しうるさい側にある。だが、エンジン音が重なるマイルド・ハイブリッドよりは静か。シャシーの特性やパワートレインの滑らかさも踏まえると、600eの方が快適性は高い。

フィアット600 1.2ハイブリッド(英国仕様)
フィアット600 1.2ハイブリッド(英国仕様)

エネルギー効率は、EVの600eで平均5.4km/kWhと、際立つものではない。実際の航続距離は、280km程度と考えていいだろう。急速充電は、最大100kWとなる。

マイルド・ハイブリッドの燃費は、カタログ値で20.4km/L。丁寧にアクセルペダルを傾けない限り、101psでも135psでも、平均で18.0km/Lを超えることは難しいようだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

フィアット600と600eの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事