【英国にアルピナを広めた男】フランク・シトナーに聞く アルピナB3 ツーリング AUTOCARアワード2021 後編

公開 : 2021.06.18 16:25  更新 : 2021.06.18 22:04

アルピナなら新しい市場を生み出せる

1シリーズがベースの、小さな5ドアのディーゼルが欲しかった、と話すシトナー。一方でボーフェンジーペンが愛したストライプのデカールは、好きになれなかったという。

「英国では、多くの人がクルマに対する思慮深さを強く意識していました。目立っても構わないのなら、ポルシェを選ぼうと思うはずです」

英国のアルピナ・ディーラー、シトナー・ノッティンガム社を立ち上げたフランク・シトナー
英国のアルピナ・ディーラー、シトナー・ノッティンガム社を立ち上げたフランク・シトナー

E32型のBMW 745iは、右ハンドル車が英国には入ってこなかった。そこでシトナーは、B9と同じ手法を735iにも適用させることを決めた。現在でいうB7の原型として、英国で売られることになる。

ボーフェンジーペンは珍しいレシピとして、完全なホットモデルには仕上がらなかったと話している。しかし独自のB7の製造を許されたという事実が、アルピナとのつながりの暖かさや、相互尊重の関係性を物語る。

内燃エンジンの存続が危ぶまれる中で、不確実性は潜んでいると認めつつ、シトナーはアルピナの将来を不安視していない。「アンドレアスが進める技術は、彼の父のものと並行。より専門的な技術トレーニングが必要なだけです」

「アンドレアスのチームが、新しい小規模市場を生み出せると期待しています」。アルピナの強い独自性を認めるように話す。

「素晴らしいクルマを作って来ました。アルピナは主要な選択肢に対する、別の一択といえるブランド。今後、二度と生まれることはないかもしれません」。少し無関心そうにシトナーは口にするが、すぐに力強く続ける。

「起業家精神に溢れた、過去の一部です。ボーフェンジーペンによる、類まれな素晴らしい創造だったといえますね」

アルピナB3 ツーリングが満点を得た理由

AUTOCARの詳細テストでは、性能を確かめるだけでなく、カテゴリーでのゲームを一歩進める、という視点を重要視している。ポルシェ・タイカントヨタGRヤリスも、その一歩進んだゲームチェンジャー的な完成度を充分に理解できると思う。

客観的に優れているクルマでも、型を破れていないクルマの場合は満点には至らない。では最新のアルピナB3ツーリングは、ミドルサイズの高性能ステーションワゴンとして、革新的な内容だったとまでいえるだろうか。

アルピナB3 ツーリング(英国仕様)
アルピナB3 ツーリング(英国仕様)

AUTOCARで、採点する際にもう1つ重視しているポイントが、クルマの目的に合致しているかどうか。アルピナB3ツーリングが得点を高めた理由は、ここにある。クルマとしての完成度が高いとはいえ、この評価軸での満点という結果は珍しい。

乗り心地や操縦性の質感、性能のポテンシャル、製造品質、インテリアの設えや実用性、全方向への視界。評価するポイントを確認していくと、この種のクルマに求める内容に対して、アルピナB3 ツーリングはすべてが満点を付けられる水準にある。

美しいと感じさせるまでに考え抜かれたクルマであり、仕上がりは完璧。すべての強みが融合し、スペシャリストが作る以上のクルマとして完成している。

地球上で最良のオールラウンダーといっても過言ではない。筆者は、そう思う。

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