V12グランドツアラーの完成形 フェラーリ12チリンドリ・スパイダー(2) 角を丸めた性格が生む総合力 予想超えの敏捷性

公開 : 2026.07.21 18:10

クラシカルな趣のGTを目指した、フェラーリ12チリンドリ・スパイダー。直接浴びれる類まれなエンジン音に、予想を超える敏捷な身のこなしで、1つの完成形にあるとUK編集部は評価します。

直接浴びれる類まれなエンジン音

フロントに自然吸気の6496cc V型12気筒エンジンを搭載する、フェラーリ12チリンドリスパイダー。ルーフを開けば、類まれなエンジン音を直接浴びれる。積極的なドライブモードを選び、高域まで引っ張れば、鳥肌モノの咆哮も堪能できる。

6000rpm以上でオペラ歌手のような美声が放たれ、9000rpmを過ぎても、響きは滑らかで心地良い。ボディ剛性がクーペに届かずとも、注文される12チリンドリの半数がスパイダーであることも納得できる。

フェラーリ12チリンドリ・スパイダー(英国仕様)
フェラーリ12チリンドリ・スパイダー(英国仕様)

V12エンジンは、回転上昇が極めてリニア。巧妙だと唸るのが、峠道で多用する3速と4速では、エンジンレスポンスが僅かにマイルドに、リニアに制御されること。その結果、運転体験がより濃密なものになっている。

トランスミッションは8速デュアルクラッチ。トルクコンバーター式のATほど、発進時は滑らかではないかわりに、電光石火級の変速を叶えている。12チリンドリの特性とも、見事に調和している。

9250rpmで達する830psに上質な乗り心地

先代の812 スーパーファストより角を丸めた性格とはいえ、圧倒的に速い。9250rpmで達する最高出力は830psで、最大トルクは69.0kg-m。0-100km/h加速は3.0秒で、最高速度は339km/hに届く。クーペより多少劣るとしても、相対的な違いでしかない。

ブレーキはバイワイヤ制御され、ペダルの感触はソリッド。重み付けも丁度良く、停止まで漸進的に制動力が立ち上がり、とても好ましい。

フェラーリ12チリンドリ・スパイダー(英国仕様)
フェラーリ12チリンドリ・スパイダー(英国仕様)

サスペンションは、60kgの重量増と後方へ移動した重量配分に合わせて、調整を受けている。それでも、バンピーロード・モードなら乗り心地は上質。同クラスの中では締まりがある方で、路面への接地感は強いものの、不快な振動はしっかり均される。

荒れた路面では、ルーフを閉じていても、ボディの細かな振動で剛性の変化を感じる。しかし、殆ど気付かないレベルにある。

予想を超える敏捷な身のこなしと一体感

ステアリングは、ロックトゥロックが約2回転とクイック。適度な手応えがあり、神経質さは排除されている。ドライバーの座る位置はリアアクスルへ近いが、実際に飛ばしてみると、そんな感覚も伴わない。

新世代のアクティブ後輪操舵システムに加えて、サスペンションやステアリングラックのチューニングにより、むしろ感覚はボディの中央。フロントタイヤやエンジンが遠くにある印象はなく、高い一体感を実現している。

フェラーリ12チリンドリ・スパイダー(英国仕様)
フェラーリ12チリンドリ・スパイダー(英国仕様)

身のこなしは、予想を超えるほど敏捷。同時に、線形的で直観的。揺るぎない動力性能と、滑らかで安定した操縦性で、長距離ドライブとの親和性は非常に高い。総合的な動的能力のバランスは、屈指の水準といっていい。

そんな魅力を、簡単に開け放てるリトラクタブル・ハードトップが引き立てる。高速域での風の巻き込みも、リアウインドウのお陰で気にならない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

フェラーリ12チリンドリ・スパイダーの前後関係

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