【4.4L ビターボV8で621ps】アルピナB8 グランクーペへ試乗 多能なグランドツアラー

公開 : 2021.08.27 08:25

特別な違いを生むすべてのバランス

車内には、随所にアルピナのロゴが散りばめられる。フロントシートの間には、シリアルナンバーが記されたプレートがあしらわれ、試乗車は009番だった。基本的にインテリアのデザインは、BMWの8シリーズを踏襲している。

リッチなシート表皮は、BMWと同じメリノレザー。アルピナのオプションとして、試乗車のアイボリーとナイトブルーの組み合わせのように、大胆なカラーコーディネートを指定することも可能だ。

アルピナB8 グランクーペ(英国仕様)
アルピナB8 グランクーペ(英国仕様)

ステアリングホイールは、アルピナ独自のラヴァリナ・レザー。標準とは違った握り心地を提供している。少しグリップが良く、ブルーとグリーンのステッチが施される。細かな部分だが、特別なクルマに乗っていると感じる。

定員は5名。リアシートの中央には大きなトランスミッション・トンネルが走り、中央席への乗車は長時間を避けたいところ。

スタートボタンを押すと、抑制の効いたノイズでV8ビターボが目を覚ます。メルセデスAMGとは違う気遣いだ。そして50mも走れば、通常の8シリーズ・グランクーペとは違うことに気づく。その鍵は、すべてのバランスにある。

アルピナはスペックシートの数字のとおり、尋常でなく速い。近年の電気自動車も同等に速いものの、B8の加速は魅惑的。よりアナログで、エンジンの回転数の上昇に合わせて変化するトルクカーブへ夢中になれる。

喜びのステアリングとサスペンション

ツインターボの過給圧が高まるまで少しのタメがあるが、それ以降はワープするような勢い。ほかの超高速マシンとは異なり、極めてダイレクト感も強い。

乗りはじめは、少し余計にアクセルを踏み込んでいたらしく、ペダル操作に対する反応が不自然に感じられた。加速時は慣性で荷重がリアタイヤへ強く載りすぎ、フロントノーズの安定性が低くなる印象もあった。

アルピナB8 グランクーペ(英国仕様)
アルピナB8 グランクーペ(英国仕様)

しかし慣れるほどに、ずっと操縦しやすいことが理解できる。衝撃を受けるほど、息を呑む加速度も生み出せる。しかし実際は、扱いやすい。

個人的には、スポーツ・モード時のエグゾーストノートはもう少しにぎやかな方が好み。BMWらしい音響はプッシュしていくと楽しめるが、もう少し低めの回転域から聞きたい。アイドリング時は、外にいる方が豊かなサウンドに浸れる。

ステアリングは喜び。トップクラスのスポーツカー並みの感覚はないものの、極めてリニアで正確。投入された技術力の高さを示すように、とても滑らかでもある。

サスペンションも同様。スポーツ・モードを選択しても、B8はしなやかに路面を受け流す。長距離ドライブも、安楽にこなせるはずだ。

タイヤは専用設定のピレリPゼロ。トゲのある入力は丸めつつ、タイトにコーナーを旋回していく振る舞いに唸らされる。うねるような路面状態でも、不安定さを感じることはなかった。

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