詳細データテストを振り返る 後編 ほかのテスターに試乗車をおすすめ 問われるプレゼントのセンス

公開 : 2021.12.25 19:25

『ロードテスト』総括企画の後編です。意外なのは、911のバリエーションが1台も選ばれなかったこと。どうやら、誰かが選ぶと思って遠慮しあった結果のようです。そして、いよいよ気になる初代レンジの再生版が登場します。

改めて、ルール説明

クリスマスに恒例の、1年間をふりかえるミーティング、今年はディナーではなくランチを囲むこととした。そして、クルマ選びのルールも多少変更している。改めて簡単に説明しよう。

例年なら、テスターが各自、お気に入りの1台を持ち寄ったところだ。しかし、今年は誰かにプレゼントする形式で、集合場所で発表するまで車種は内緒。おかげで、すでに述べているとおり、選びたいクルマを持ってこれなかったテスターもいたのだが。

憧れのビッグクーペから激安の足グルマまで、各テスターのチョイスはさまざまだが、みんな一応は自分なりの根拠を持って選んだ結果だ。
憧れのビッグクーペから激安の足グルマまで、各テスターのチョイスはさまざまだが、みんな一応は自分なりの根拠を持って選んだ結果だ。    LUC LACEY

内訳は、EVが3台、MT車が2台、ビッグクーペとディーゼルワゴンが1台ずつ、そして掟破りのレストモッドが1台。もっとも注目を集めたのは最後の、新車と呼べるか疑わしいクルマだが、その詳細はまた後ほど。

さらに、試乗はできなかったが、自分で乗るなら、というテーマでもクルマを選んだ。きわめて主観的な2021年の総括、前編に引き続きお楽しみいただきたい。

ダチア・サンデロ:ジェームズ・ディスデイルからマイク・ダフへ

パブの駐車場にサンデロを見つけた途端、自分がそのステアリングを握る栄誉に浴することにうすうす気づいた。結果は予想通り。ディスデイルが熟慮の末そのチョイスにたどり着いた理論的な根拠は、わたしの日々が華やかで恵まれているという大きな誤解だ。

「君はいつも、世界中のあちこちを飛び回って、浮世離れしたスーパーカーに乗っているよね。だから、現実を知る機会を用意してあげようと思ったんだ」というのが彼の言い分だった。「なんで君ばっかり、そんな思い通りになるんだ?こっちはまったく真逆だよ」。

スーパーカーを試乗する機会が多いダフだが、すでにこの安価なサンデロには試乗済みだった。そして、じつは結構気に入っているらしい。
スーパーカーを試乗する機会が多いダフだが、すでにこの安価なサンデロには試乗済みだった。そして、じつは結構気に入っているらしい。    LUC LACEY

たしかに今年、AUTOCARでレポートしたクルマの平均馬力は、400psを少しながら上回るし、安さの限界に迫るようなクルマと共に過ごす時間はほとんどなかった。その希少な機会で、すでにこのダチアの魅力には気づいていたのだが。

その歩みは、今回のどのクルマよりもゆっくりだ。しかし、中級グレードのコンフォートで十分すぎるほど豪華に感じられる。ワイヤレス接続できるAndroid Autoなど、コネクティビティは多くのプレミアムブランドよりずっといい。これがプレゼントなら、大満足だ。負け惜しみではなく。

アルピナB8グランクーペ:マイク・ダフからリチャード・レーンへ

レーンのことをわかっているなら、アルピナに心酔していることは知っていて当然だ。しかし、あまりにわかりやすい、彼がすでに多くの賛辞を重ねてきたクルマの中から選ぶのは避けたかった。

そこで選んだのが、B8グランクーペだった。これは、ブッフローエがより知的な爆速BMWを探しているユーザーに、選択肢を提供してきた事実をこれみよがしでなく思い出させてくれるクルマだ。

これぞまさしく、ベルベットの手袋に包まれた鋼の拳。優雅な姿に、強烈なパフォーマンスを秘めたB8。しかしレーンは、B5ツーリングのほうがお好みらしい。
これぞまさしく、ベルベットの手袋に包まれた鋼の拳。優雅な姿に、強烈なパフォーマンスを秘めたB8。しかしレーンは、B5ツーリングのほうがお好みらしい。    LUC LACEY

「エンジンが真ん中や後ろにないクルマだったら、アルピナしかない」というのがレーンの主張だ。「そしてこのクルマは、彼らの伝統的なレシピを示す好例だ。とてつもないパフォーマンスの持ち主だが、驚くほど楽に日常使いできる。ベルベットの手袋に包まれた鋼の拳といった趣。これぞまさしく、羊の皮を被った狼だ」。

ただし、レーンのホームランコースにドンズバ、というわけではなかったらしい。「アウトバーンで無敵の戦車を選ぶなら、これではない。やはりB5ツーリングが最高だ」。言い回しはめんどくさいが、言いたいことはよくわかった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マイク・ダフ

    Mike Duff

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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