【新フラグシップSUV】BMW iX xドライブ50へ試乗 総合523ps 新基準の洗練性 後編

公開 : 2021.10.08 19:05  更新 : 2021.10.11 17:46

快適でありながら、運動神経に長けパワフルな純EV大型SUVのiX。新世代BMWのフラッグシップ・モデルを、英国編集部が評価しました。

スマートに強力で超が付くほどスムーズ

執筆:Greg Kable(グレッグ・ケーブル)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
新しいBMW iXでスポーツ・モードを選択すると強力な発進加速を披露するが、攻撃的に感じるほどではない。滑らかな速度上昇を意識してプログラムされ、スマートと呼べる印象だ。

0-100km/h加速は4.6秒。テスラモデルXには並ばないものの、アウディeトロンジャガーIペイスメルセデス・ベンツEQCなどよりは鋭い。

BMW iX xドライブ50 スポーツ(欧州仕様)
BMW iX xドライブ50 スポーツ(欧州仕様)

アクセルペダルの操作に対する反応は瞬間的。駆動用モーターのトルクが間髪入れず立ち上がる。高負荷時にはモーターからかすかな唸りが聞こえてくるが、耳障りには感じないだろう。

シングルギアだが、160km/h以上の速度へ突入し空気抵抗が増しても、加速度が鈍くなるようなこともない。モーターのパワーには余裕があり、高回転域でも滑らかさは失われない。

xドライブに用いられるソフトウエアも新開発。突出して高いトラクションを生み出す。完全な後輪駆動状態から、後輪にトルクベクタリング機能が働いた四輪駆動まで、制御の幅も広いという。

エフィシエンシー・モードは、都市部の交通環境にぴったり。穏やかなスロットル・マッピングへ変化し、リムジンのように静かに、超が付くほどスムーズに運転できる。

運動エネルギーの回生量は、ステアリングホイールに取り付けられたパドルを介して、ドライバーが強中弱の3段階から選択可能。操作せずとも、車載センサーやナビの地図データなどを用い、自動的に調整してもくれる。操作は簡単で、減速も直感的だ。

今までにない平穏な運転体験

ギアセレクターをスライドさせBを選ぶと、回生ブレーキが最も強力に働く。アクセルペダルの操作だけで発進から停止までまかなえる、ワンペダル・ドライブも可能になる。

一度停止するとヒルホールド機能も働き、再びアクセルペダルが踏まれるまでiXは静止状態を保ってくれる。ブレーキペダルを踏むことなく、運転できる。

BMW iX xドライブ50 スポーツ(欧州仕様)
BMW iX xドライブ50 スポーツ(欧州仕様)

パワートレインは感心するほど静かだが、風切り音も非常によく抑えられている。試乗車の履く扁平率40のタイヤは、路面状態で明らかに変化するロードノイズが聞こえていたが、標準仕様なら影響も受けにくいはず。

とはいえ、iXの上質さは新基準。日常的な運転へ、今までにない平穏をもたらしてくれるだろう。

iX xドライブ50のサスペンションは、フロントがダブルウイッシュボーン式で、リアがマルチリンク式。スチールコイルと、減衰力が変化するリフトリレーテッド・ダンパーが標準だが、試乗車のようにエアスプリングにアダプティブ・ダンパーも指定できる。

電動機械式パワーステアリングは、軽量なものを採用したという。反応はクイックで、ターンイン時には好印象な正確性も持ち合わせる。

乗り心地は、滑らかな路面でのエフィシエンシー・モードなら、垂直方向の動きが抑制され非常に滑らか。エアサスとアダプティブ・ダンパーの力も借り、路面との追従性を損なわず、細かな衝撃を巧みに吸収していた。

反面、ワダチを斜めに超えたり、舗装が剥がれた大きな穴などを通過すると、軽くない車重を隠しきれない様子。落ち着きを保てない場面もあった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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