フェラーリ812 コンペティツィオーネへ試乗 NA 6.5L V12で830ps 限定999台

公開 : 2021.11.15 08:25

エキサイティングでも、角が取れた印象

アンダーボディはフラットで、812 スーパーファストには備わる、ホイールアーチ内の気流を調整するフィンがなくなった。多量の空気がボディ底面を高速で流れ、巨大なリアのディフューザーへ導かれるように。

チタン製のエグゾーストは、リア・ディフューザーを避けてボディ両端から顔を出す。排気ガスの微粒子を取り除くガソリン・パティキュレート・フィルターが装備され、消音器部分が不要になったことで可能になったレイアウトだ。

フェラーリ812 コンペティツィオーネ(欧州仕様)
フェラーリ812 コンペティツィオーネ(欧州仕様)

リアデッキにはカーボンファイバー製のフィンが並び、ボディ幅いっぱいの巨大なリアスポイラーへ向けて、気流を整える。ボディと同色に塗られたデッキ部分は、ボディ後半を長く見せる効果もある。

フロントに大きなV12エンジンを載せた812 コンペティツィオーネだが、ミドシップのような雰囲気も湛えている。なんとも勇ましい。

今回筆者が試乗を許されたのは、フェラーリのフィオラノ・サーキット内のみ。F12 tdfで走った記憶が蘇る。830psを開放することが難しい、公道での走行は叶わなかった。

812 コンペティツィオーネは、むやみにドライバーを怖がらせない。レブリミットは9500rpmだから、極めてエキサイティングだが、より角が取れた印象がある。近づきやすい。

もちろん極めて機敏。極太のフロントタイヤと、アクティブ・リアステアのおかげで、1700kgほどと予想される車重を感じさせない。乾燥重量は1487kgで、812 スーパーファストより38kg軽い。

特別な最新のフェラーリは走らせても極上

ステアリングは、現代のフェラーリの特色といえる。軽く正確で、クイックだ。ブレーキペダルに力を入れたままコーナーへ侵入しても、シャシーは安定。フロントノーズの向きも、狙ったとおり。

高速コーナーでパワーを掛けても、フロントタイヤの反応は不変。バランスされたコーナリングへ、自然と落ち着くことができる。速度域を問わず信頼感が高く、コミュニケーション力が豊かだ。

フェラーリ812 コンペティツィオーネ(欧州仕様)
フェラーリ812 コンペティツィオーネ(欧州仕様)

ポルシェ911 GT3や、ミドシップのF8 トリブートほど、高バランスで自由度が高いわけではない。それでも、830psの最高出力とフロントタイヤのサイズを考えれば、充分に扱いやすい。

インテリアは、カーボンファイバーが各所に与えられているが、基本的な構造は812 スーパーファストと同じ。膨大なオプションリストから、自分好みに仕立てられる。

さて、812 コンペティツィオーネの英国価格は、44万6970ポンド(約6928万円)から。オプションレスで。

カーボン製ホイールは、1万7760ポンド(約275万円)で、車内のカーボン製ドアハンドルは2400ポンド(約37万円)。ローンチ・シルバーとイエロー・ストライプの塗装でボディを仕上げるには、2万160ポンド(約312万円)が必要になる。

思わず唸ってしまう金額だが、心配ご無用。999台の予定生産台数は、既にフェラーリをこよなく愛するコレクターによって受注済みだという。当面は市場に出てこないだろう。

特別なフェラーリは、大切に保管する価値がある。だが最新の812 コンペティツィオーネは、走らせても極上だった。

フェラーリ812 コンペティツィオーネ(欧州仕様)のスペック

英国価格:44万6970ポンド(約6928万円)
全長:4696mm
全幅:1971mm
全高:1276mm
最高速度:339km/h
0-100km/h加速:2.9秒
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:1700kg(予想)
パワートレイン:V型12気筒6496cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:830ps/9250rpm
最大トルク:70.3kg-m/7000rpm
ギアボックス:7速オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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