新たな自動車会社『EMT』打越CMO単独インタビュー(前編) このままじゃダメだという意識 ゼロスタートだからできること

公開 : 2026.08.13 11:45

来年軽EV乗用車発売予定の『EMT』。開設したばかりの同社R&Dセンターで、日産、日本電産、ステランティス・ジャパンでキャリアを積んできた打越晋CMOに、森口将之が単独インタビューを試みました。前後編に渡ってお送りします。

事業・ブランド発表会で語られなかった部分

オートバックスや奇瑞汽車(チェリー)など、日中5社の出資により昨年横浜に設立された、新しい自動車会社『EMT』(エレクトリック・モビリティ・テクノロジーの略)。

先月初めに事業・ブランド発表会の模様を記事化しているが、説明会に参加して記事を書いたひとりとして、いまひとつ掴み切れない部分があったのも事実だった(編集部注:6月9日公開「新たな日本市場向け自動車ブランド『エムタ』発表! 軽乗用EVを来年投入予定【BYDラッコのライバル?】」をご覧下さい)。

CMOの打越晋氏に単独インタビューを行った『EMT R&Dセンター』。取材はまさにオープン日で、まだ中はがらんどうの状態。
CMOの打越晋氏に単独インタビューを行った『EMT R&Dセンター』。取材はまさにオープン日で、まだ中はがらんどうの状態。    中島仁菜

そこで、当日も登壇したCMO(最高マーケティング責任者)の打越晋氏に、改めて話を聞くことにした。場所は7月21日にオープンした神奈川県横浜市にある『EMT R&Dセンター』で、取材はまさにその当日。設備の搬入はまだだったが、オフィスにはすでに机が並べられ、多くのスタッフが業務を開始していた。

打越氏は、日産自動車に約30年在籍し、アフリカや中国への駐在経験もある。その後は日本電産(現在のニデック)を経て、ステランティス・ジャパンの代表取締役を務めてきた。つまり、自動車業界を知り尽くした方といってもいいだろう。

なぜそんな方が、EMTに入って仕事をするようになったのか。まずはその背景について語っていただいた。

海外勤務を経て感じた日本

「昔は日本車が世界的に強くて、売り方も評価されていました。日本人そのものが尊敬されていたような時代です。それがだんだん、日本人のほうが、上から目線になってきて、考えも固くなってきて、新しいものを受け入れようという気持ちが薄れてきたように感じたのです」

海外赴任を終えて日本に帰ってきた打越氏は、みんなパソコンを使っているのに紙の資料にこだわる文化を、不思議に感じていた。多くの会社で既存のシステムが構築されており、変えることが難しいと感じたそうだ。

EMTのカラーであるオレンジを纏う打越氏。ちなみにオートバックス由来という訳ではないそうだ。
EMTのカラーであるオレンジを纏う打越氏。ちなみにオートバックス由来という訳ではないそうだ。    中島仁菜

「私がせっかく海外でいろいろ勉強してきたことを日本に恩返しようとしても、なかなかできない。そこへいくと、今回のEMTはゼロからのスタートなので、もちろんチャレンジングですけれど、自分で『おかしい』と思ったことを変えていけるかもしれないと思い、お世話になることに決めました」

日欧中の自動車市場を見てきて

打越氏は、日産でアフリカに赴任したときはルノーも手がけていたので、ヨーロッパの市場も見てきた。その後は中国で東風日産の業務にも携わった。つまり日欧中の自動車市場を見てきたことになる。

「ヨーロッパは、クルマの歴史が長いので、クルマづくりに対するポリシーはものすごく強い。その点はまだまだ日本車が追いつかない部分だと感じました。中国は、とにかくやってみよう、失敗はしてもしょうがないというマインドでした」

来年発売予定の軽EV乗用モデル。『エムタ』ブラントから発売される第1号車となる。
来年発売予定の軽EV乗用モデル。『エムタ』ブラントから発売される第1号車となる。    EMT

同氏が東風日産の総経理という立場だったときも、現地採用の中国人がいろいろなことに挑戦したがっていたのに、日本の技術者は過去にいろいろ痛い思いをしているので、なかなか「うん」と言わなかったそうだ。

その違いが今のクルマ、特にEVでの日本車と中国車の違いになってきている、というのが打越氏の分析だ。今の日本には、ユーザーもマーケットも、新しいものを受け入れて、それをどんどん盛り上げていこうという風潮があまりないと感じているという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。
  • 撮影

    中島仁菜

    Nina Nakajima

    幅広いジャンルを手がける広告制作会社のカメラマンとして広告やメディアの世界で経験を積み、その後フリーランスとして独立。被写体やジャンルを限定することなく活動し、特にアパレルや自動車関係に対しては、常に自分らしい目線、テイストを心がけて撮影に臨む。近年は企業ウェブサイトの撮影ディレクションにも携わるなど、新しい世界へも挑戦中。そんな、クリエイティブな活動に奔走しながらにして、毎晩の晩酌と、YouTubeでのラッコ鑑賞は活力を維持するために欠かせない。

新たな自動車会社『EMT』打越CMO単独インタビューの前後関係

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