レクサスNX 2つの「ボンネットキャッチャー」装備で走りがよくなるワケ 

公開 : 2021.12.10 05:45

なぜ今まで実装されなかった?

もちろん、市販モデルに乗ってもそれ単体の効きを実感するのは無理だろう。

あくまで「全体」の走りをよくする要素の1つにすぎないからだ。

レクサスNX
レクサスNX    レクサス

しかし、レクサスがコストをかけてわざわざ採用したことを考えれば、効かないわけがないと考えるのが自然。

常識的に考えて、多くのオーナーはボンネットを開けることすらなく気づかないような部分に、わざわざコストをかける必要なんてないからだ。

もちろん、開発過程においては純粋にキャッチャー部分だけはシングルとダブルとで異なる実験車両を制作し、そこで効果を確認している。

その結果を経て、採用のゴーサインが出たのだ。

しっかり効果があるなら、前から採用すればよかったではないか?

たしかにそうなのだが、ここで強調しておきたいポイントは、いままで簡単には実現できなかったことを新型NXには織り込んだといういうことである。

レクサスとしても、ボンネットキャッチャーのダブル化は車体設計のエンジニアや操縦性担当レベルでは従来からやりたかったという。

しかし高いハードルがあってできなかったというのだ。

高いハードルとは何か? 生産の都合である。

高い効果があっても、量産車である以上、生産現場がそれに対応できなければクルマに装着するのは無理だ。

ボンネットキャッチャーのダブル化も、取り付けに工数がかかるなど生産ラインでの対応が難しかったのだという。コストも絡む。

「IS」とも共通するレクサスの理念

しかし昨今のレクサスは少し違う。

「走りのためにそこまでやろう」と、生産現場までが一体となりなんとか採用の糸口を探すのが今のレクサスなのだ。

レクサスIS
レクサスIS

生産において高いハードルはあったけど、よりよいクルマとするためにそれをこえて新しい機構を組み込む。

新型NXのボンネットキャッチャーがダブル化された背景を探っていて「同じだ」と感じたのは、1年ほど前にマイナーチェンジした「IS」のあの部分のことだ。

一般的に国産車は、ナットを締めてホイールをハブに固定する。

しかし最新のISはレクサスとしてはじめてボルトで固定する方式(欧州車に採用例が多い)とした。

なぜならそのほうがホイールとハブの締結力を上げることができ(ホイールナットでそれをやるとボルトが伸びる)、密着度が高まることでハンドリングが向上するからだ。

それは以前からわかっていた。

しかし、これまでとガラリとやり方を変えるのは生産設備の入れ替えが必要だったり他車との混流生産の都合もあって生産現場での対応が難しく、やりたくてもできなかったのだ。

いくつものハードルを乗り越えて、やっと新型ISで採用できたのである。

走りのために、生産現場での不都合は何とか解決して乗り越えていく方法を探していく。

それが今のレクサスの意気込みなのである。

ちなみにISで初採用されたボルトによるホイール固定は、新型NXにも採用。今後はレクサスにおいてさらに採用車種が広がっていくという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    工藤貴宏

    Takahiro Kudo

    1976年生まれ。保育園に入る頃にはクルマが好きで、小学生で自動車雑誌を読み始める。大学の時のアルバイトをきっかけに自動車雑誌編集者となり、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。はじめて買ったクルマはS13型のシルビア、もちろんターボでMT。妻に内緒でスポーツカーを購入する前科2犯。やっぱりバレてそのたびに反省するものの、反省が長く続かないのが悩み。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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