時代の最高速モデル 1970年代 フェラーリ365 GT4 BB ブランド初の12気筒ミドシップで302.5km/h

公開 : 2022.04.23 07:06

クルマの性能を端的に表す指標の1つ、最高速度。過去100年間を振り返り、各年代の最速モデルをご紹介します。

ミドシップへシフトしたフェラーリ

1920年代以降、各年代の最高速モデルをご紹介する今回の企画。その10台では初めて登場するフェラーリが、1970年代の代表となる365 GT4 BBだ。

最高速度は、フェラーリの主張では時速188マイル(302.5km/h)と、大台を突破していた。また、同社初のV型12気筒ミドシップ2シーターとして、重要な意味を持つモデルでもある。

フェラーリ365 GT4 BB(1973〜1973年/欧州仕様)
フェラーリ365 GT4 BB(1973〜1973年/欧州仕様)

プロトタイプの365 GT4 BBが発表されたのは、1971年のトリノ・モーターショー。ただし、シャシーの中央に12気筒エンジンを搭載するレイアウトは、レーシングカーで経験を積んでいた。

グランプリマシンのフェラーリ512では、コクピットの直後に12気筒エンジンを配置。シャープな操縦性と優れた空力特性を実現し、確かな強さを証明していた。

しかし、フロントエンジンの365 GTB/4(デイトナ)が、1966年のランボルギーニ・ミウラと比較されることを、フェラーリが無視することはできなかった。1967年のディーノ206と後の246で、ミドシップへのシフトは決まっていたようなものだった。

365 GT4の「BB」は、ベルリネッタ・ボクサーの略。スポーツクーペ・ボクサーエンジンを意味している。

幅の広いエンジンのプロポーションは、そもそもフロント・レイアウトには不向きといえる。反面、ユニットの高さ自体は低く抑えられていたが、トランスアクスルがその下に取り付けられ、365 GT4 BBでは設計上のメリットが充分に生かされていなかった。

その後の512 BBでは、ドライサンプ化。重心位置が落とされている。

ピュアなピニンファリーナのデザイン

365 GT4 BBのエンジンは、バンク角を180度に広げた、広角V型といえる水平対向の12気筒。4.4Lで最高出力385ps/7200rpm、最大トルク41.5kg-m/3900rpmを発揮した。水平対向12気筒を世界で初めて量産したのが、この時のフェラーリだ。

スタイリングを担当したのは、ピニンファリーナ社。シンプルでピュアなデザインは、後継モデルにも派生する要素を備えていながら、最も美しい。

フェラーリ365 GT4 BB(1973〜1973年/欧州仕様)
フェラーリ365 GT4 BB(1973〜1973年/欧州仕様)

1968年に発表されたコンセプトカー、P6から展開されたデザインは、可能な限り余計な要素が削り落とされている。フロントノーズは低く、内側に傾けられたラジエターが納まり、小さな荷室空間が用意されていた。

365 GT4 BBの特長といえるのが、小さな6灯のテールライトと、左右3本に別れた細い6本のマフラー。これは、プロトタイプでは4灯と4本だった。

ヘッドライトはリトラクタブル式。その手前には、巨大なウインカーがボディ面に沿ってレイアウトされている。サイドには、仰々しいエアインテークは一切ない。

ボクサーエンジンの手前で垂直にリアウインドウが立ち上がり、後方視界を確保している。エンジンカバーの両サイド、フライング・バットレスのスポイラーも、ルーフラインとなだらかに一致。気流を整えつつ、4基のキャブレターへ必要な空気を供給している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・テイラー

    Simon Taylor

    英国編集部ライター
  • 撮影

    オルガン・コーダル

    Olgun Kordal

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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