時代の最高速モデル 1970年代 フェラーリ365 GT4 BB ブランド初の12気筒ミドシップで302.5km/h

公開 : 2022.04.23 07:06

カウンタックと対照的に優しく優雅

今回ご登場願ったのは、1975年のモーターショーで展示された365 GT4 BBそのもの。特別な1台といえる。現代の基準でいっても、ボディはワイドに見える。

ランボルギーニは1974年にカウンタックを発売していたが、直線的で攻撃的なスタイリングと比較して、滑らかで優しくカーブを描く面構成が優雅。均衡も取れている。

フェラーリ365 GT4 BB(1973〜1973年/欧州仕様)
フェラーリ365 GT4 BB(1973〜1973年/欧州仕様)

シンプルなボディサイドには、ドアミラーがない。ドアハンドルはサイドウインドウ付け根にある小さなレバーで、印象が乱されてもいない。

クラシカルなカンパニョーロ社製アルミホイールを包むのは、当時物の215/70サイズのミシュランXWX。正しい容姿を保っている。

幅の広いサイドシルをまたぐと、ドライバーは車両の中心側に座る。レザーシートに身体を納め、ステアリングホイールを握るには、少し腕を伸ばす。アクセルペダルを踏むには、膝を曲げる必要がある。

この時代のフェラーリらしく、ダッシュボードに並ぶのはメーターとラジオのみ。365 GT4 BBの場合は、合計8枚が整然とレイアウトされている。

エアコンはオプションだったが、ヒーター系とパワーウインドウのスイッチは、レザーでトリミングされたセンターコンソール上。右ハンドル車のこの場合、シフトレバーは助手席側に飛び出ている。

一般的なキーを差し込み、ゆっくり回してエンジンを始動。キャブレターからの吸気音が一瞬聞こえるが、すぐにボクサーユニットのノイズにかき消された。

当時最大の武器といえた余裕のあるパワー

横にはみ出たドッグレッグ・パターンのゲートをなぞるように、1速を選ぶ。アクセルペダルの踏みごたえは重く粘りがある。それ以外の操作系は軽くリニアだ。

車内には光が沢山差し込み、開放的ですらある。ダッシュボードの位置が低く、リアウインドウも広く、全方向に視界は良い。ドアミラーは欲しいところだが。

フェラーリ365 GT4 BB(1973〜1973年/欧州仕様)
フェラーリ365 GT4 BB(1973〜1973年/欧州仕様)

エンジンオイルが温まるのを待って、ストロークの長いアクセルペダルを踏み込む。キャブレターが勢いよく空気を吸い込み、7600rpmのレッドラインめがけてレブカウンターの針が跳ね上がる。

叫び泣くようにエンジンが吠え、385psに近いであろう馬力が放たれる。テストコースのストレートで160km/hほどまで加速する。フルスロットルは与えなかった。

広いサーキットなら、もっと365 GT4 BBを探れるだろう。ステアリングは軽く手応えは素晴らしい。細身のリームを通じて、アスファルトのニュアンスを逐一教えてくれる。

1960年代のランボルギーニ・ミウラと比較すると、大きな進化を実感する。1970年代に欧州大陸を横断するなら、迷わずこちらを選びたいと思わせる仕上がりだ。

さほど気張らず、バックミラーに映る後続車を蹴散らすことも難しくない。引き出しやすい余裕を感じさせるパワーは、当時最大の武器といえたに違いない。

協力:サイモン・ドラブル・カー社

フェラーリ365 GT4 BB(1973〜1973年/欧州仕様)のスペック

英国価格:1万4255ポンド(1973年時)/35万ポンド(約5600万円)以下(現在)
生産台数:387台
最高速度:302km/h
0-97km/h加速:6.5秒
車両重量:1551kg
パワートレイン:水平対向12気筒4391cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:385ps/7200rpm
最大トルク:41.5kg-m/3900rpm
ギアボックス:5速マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・テイラー

    Simon Taylor

    英国編集部ライター
  • 撮影

    オルガン・コーダル

    Olgun Kordal

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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