アルピーヌ、高級ブランドの地位確立へ邁進 20年で「ポルシェの真のライバル」目指す
公開 : 2025.06.06 07:45
ルノー・グループは、傘下の『アルピーヌ』をスポーティな高級ブランドとして確立し、収益改善を図っています。モデルラインナップを拡大し、世界各地に展開。ドイツ勢を強く意識しながらも独自のポジションを築きます。
電動化という不透明な未来へ
2020年、ルノー・グループの新CEOとして、ルカ・デ・メオ氏がコロナ禍で打撃を受けた同社のドアをくぐったとき、プレミアムスポーツカーブランド『アルピーヌ』は存続の危機に瀕していた。
「A110の後継車の計画はなく、アルピーヌに関する計画もほぼ皆無でした」と、デ・メオ氏は先日開催された新型A390の発表会で記者団に語った。

しかし、デ・メオ氏はアルピーヌを重要な収益源となる資産と捉え、FCAグループ在籍時にアバルト、フォルクスワーゲン・グループ在籍時にクプラで行ったのと同様の復活策を打ち出した。
この計画が承認されたのは、依然として多額の損失を出していた時期であった。「少し無謀なことでした」とデ・メオ氏は認めている。
1車種しかなかったアルピーヌのラインナップは、現在、ルノー5の高性能バージョンであるA290と、ルノー・セニックのプラットフォームをベースにしたクロスオーバー車のA390によって強化された。
しかし、この先は、電動スポーツカーという不透明な世界に飛び込むことになる。そこでは顧客数や利益が定量化できず、推測に頼るしかない。長期にわたる資本集約型の未知への冒険を、このブランドは乗り切ることができるのだろうか?
グローバル展開の動向
デ・メオ氏は、ポルシェに匹敵する確かなブランドを創造することの難しさを認める一方で、揺るぎない姿勢を示している。
「プレミアムブランドを立ち上げるには、最低20年は必要です。アウディが認められるようになるまでに25~30年の時間と、毎年数十億ドルもの投資が必要でした。わたし達はそれを一代で成し遂げるつもりはありません」

ルノーには、アルピーヌに数十億ドルもの資金を投じる余裕はない。さらに深刻な問題は、かつてアウディが置かれていた状況とは大きく異なる、厳しい世界でブランドを形成していく必要があるということだ。
まず、広大な米国の高級車市場は現在、新規参入者にとっては事実上立ち入り禁止の状態であり、アルピーヌは米国市場への足掛かりとなるはずだった2車種の大型電動SUVの計画を凍結している。
1車種の大型SUVは依然として計画中とのことだが、それも米国が歓迎的なムードになるかどうかに依存している。
「米国はEセグメント市場全体の40%を占めているため、米国での事業性は十分に期待できます。しかし、明確な見通しが立つまでは、決断を下すリスクが少々高い」とデ・メオ氏は述べた。
また、ルノー社外(おそらく中国のパートナー企業である吉利汽車)からプラットフォームを調達することになるだろう。
アウディが歓迎されたグローバル市場の1つは中国だったが、そこも今では地元企業が容赦ない価格競争を繰り広げ、荒れ果てた「サメの水槽」と化している。
アルピーヌは中国に進出するのか? 記者からの問いに対し、ブランドCEOのフィリップ・クリーフ氏は非常にフランス人らしく肩をすくめて、「かもしれない」と答えた。
フェラーリ、マセラティ、アルファ・ロメオなど、変化の激しい高級車市場で豊富な経験を持つクリーフ氏は、アルピーヌで積みあがった課題のことをよく理解している。現在、アルピーヌは自国外にほとんど進出していない。
クリーフ氏は、「売上の3分の2はフランス国内です。ドイツ、英国、韓国といった、プレミアム市場の国々にクルマを販売する方法を学ばなければなりません。次は米国に進出するつもりです」と話す。
新しいショールーム「アトリエ・アルピーヌ」は今月バルセロナにオープンし、今年後半にはパリとロンドンにも展開する予定だ。




















































