小型EVクロスオーバーの有力候補 BMW iX1へ試乗 航続437km 2モーターで312ps

公開 : 2022.10.21 08:25

四輪駆動がグリップと自然な操縦性を両立

ステアリングホイール裏のパドルを引いてブスト・モードを呼び起こすと、笑ってしまう勢いで突進していく。有効時間10秒のオマケ的な機能とはいえ、短時間で追い越しを完了したい場面では有効なことも間違いない。

もう1つ、未来的なBEVの雰囲気を楽しみたいなら、エナジャイズ(活性化)・モードをお試しあれ。ドライブモードの1つなのだが、モニターにカラフルな背景画像が表示され、一定に脈打つSF映画的なノイズが車内に響く。

BMW iX1(欧州仕様)
BMW iX1(欧州仕様)

このモードで本気の加速を試みると、大きい動物の悲鳴のようなノイズに変化する。少し奇妙だが、ドライブに飽きた子供には喜ばれるかも。

そんなギミックはさておき、xドライブとBMWが呼ぶ四輪駆動システムは、豊かなグリップ力と自然な操縦性を両立させている。ただし、ドライビング体験はそこまで魅力的ではない。

ハイスピードでカーブに進入していくと、多くのライバルより遥かにタイトな回頭性を披露する。xドライブが、リア側の駆動用モーターを主軸にしている様子も伝わってくる。

一方で、ステアリングホイールへ伝わる感触は今ひとつ。無感情な印象がある。操舵時の重み付けは良く、挙動は予想しやすいものの、意欲的に空いた道を飛ばしたいと思わせるたぐいではない。

回生ブレーキにはアダプティブ・モードが実装され、必要に応じて自動的に制動力が調整されるが、それに違和感はなかった。アクセルペダルだけで発進から停止までまかなえる、ワンペダル・ドライブも選択できる。

64.7kWhバッテリーで航続413-437km

試乗車には20インチのアルミホイールが履かされていて、足まわりは少し重たい印象だった。サスペンションがボディの揺れを巧みに抑え込もうとするが、大きなくぼみを完全には処理しきれない様子。

それでも、表面がザラついた舗装や細かいつぎはぎに対する能力は充分。全体としては穏やかな乗り心地といっていい。

BMW iX1(欧州仕様)
BMW iX1(欧州仕様)

インテリアの雰囲気のとおり、洗練された質感を、ゆとりのある気持ちで楽しむスタイルがiX1にはぴったり。適度なサイズで市街地では扱いやすい。高速道路や峠道では、シャシーの安定性が光る。

エアコンには熱効率に優れるヒートポンプ式が採用され、Cd値は0.26と空気抵抗も良好。駆動用バッテリーの容量は64.7kWhと大きくはないものの、航続距離は413-437kmがうたわれる。

このバッテリーには水冷システムが内蔵され、ナビゲーションの目的地に充電器を設定すると、最大で急速充電できるように温度を管理してくれる。また、ドライバーが任意に調整させることもできる。最適温度は25度だという。

理想的な条件での急速充電能力は、最大で130kW。約30分で10%から80%まで回復できる。

BMW iX1は、ドライビング・ファンなクロスオーバーBEVではないかもしれない。しかし、車内空間にゆとりがあり、インテリアの仕立てや標準装備、パワートレインの能力などの総合的な競争力は高い。このクラスの有力な選択肢に数えられそうだ。

BMW iX1(欧州仕様)のスペック

英国価格:5万2255ポンド(約862万円)
全長:4500mm
全幅:1845mm
全高:1642mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:5.7秒
航続距離:413-437km
電費:5.7km/kW
CO2排出量:−
車両重量:2085kg
パワートレイン:ツインモーター
バッテリー:64.7kWhリチウムイオン(実容量)
急速充電能力:130kW
最高出力:312ps/4300-15,200rpm
最大トルク:50.2kg-m
ギアボックス:1速オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    ヴィッキー・パロット

    Vicky Parrott

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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