ルノー・ヒストリックが出品! 結果に明暗 癖ある名車のオークション パリ・モーターショー

公開 : 2022.10.21 05:45

ルノー・ヒストリックは失速

その一方で会場の入り口すぐ、今回のオークションの華を担ったクラシック・エキゾチックの2台、グリーンの1974年式フェラーリ365GTB4デイトナは87万160ユーロ(約1億2600万円)、赤い1969年式ランボルギーニ・ミウラSは141万6000ユーロ(約2億532万円)と、落札予想の上限をわずかながら上まわった。

他にも予想をわずかに上まわる値をつけたのはディーノ246GTSの44万1040ユーロ(約6400万円)で、ポルシェ911はむしろ落札予想幅の中間ほどで落札が熱を帯びることはなかった。

1974年式フェラーリ365GTB4デイトナは87万160ユーロ(約1億2600万円)で落札された。
1974年式フェラーリ365GTB4デイトナは87万160ユーロ(約1億2600万円)で落札された。    南陽一浩

数年前の過熱ぶりを思うと、明らかに風向きが変わりつつある。

そうした中で、競売を迎えたルノー・ヒストリック・コレクションだが、まず1991年シーズンのF1用V10エンジン、RS3の展示用モデルというのに、驚きの6万5560ユーロ(約950万円)の値付けがなされた。

予想落札値は、3000~6000ユーロだったにも関わらず、だ。

続いては今回、ルノーの放出モデルの中で目玉といえた、1993年式のクリオ・ウィリアムズだった。

新車登録時からの唯一オーナーがルノー本体で、走行距離はたったの3万1000km。

もちろんサーキットその他のイベントなどで使われ、ラニョッティが何度も横向きに滑らせていた個体そのものに違いないが、整備コンディションは当然、完璧といえる低走行車だ。

予想値は2万5000~4万5000ユーロだったところ、なんと最終的に7万3904ユーロ(約1072万円)という、当初予想より7割近いプレミアムが付いたのだ。

やはりホットハッチはルノー、および現アルピーヌの体制に引き継がれた旧ルノー・スポールの金看板として安定した評価が与えられたといえる。

ただし、ルノー・ヒストリックの競売は失速して、やや尻すぼみ気味となった。

2011年のルノー4の誕生50周年の際に、ルノーがモンテカルロ・ヒストリック仕様に仕立てあげ、今もそのままでヒストリック・イベントに出られるはずのR4は、1万5000~2万5000ユーロ幅の予想だったが、1万9072ユーロで決着。

V6仕様のアヴァンタイムや16TXといった市販モデルは、ルノー本体によるメンテナンスやレストアが施されているにも関わらず、それぞれ2万8608ユーロ(約415万円)、1万7780ユーロ(約260万円)と、ユーズドカー市況に近い価格で落札された。

むしろ目に見えるプレミアムが付いたのは、2013年のコンセプトカーでF1のイメージをフィードバックしたトゥイジー・スポールF1で、予想上限の3万ユーロから+25%となる3万8144ユーロ(約553万円)でハンマープライスとなった。

やはりルノー・スポールF1のノウハウやイメージが注入されているモデルの強味といえる。

逆に、ドイツのチューナー、ハルトゲの手によるツインターボユニットを積み、計806台しか生産されなかったサフラン・ツインターボは希少性にも関わらず、2万~3万ユーロの事前予想レンジになんとか届く2万2648ユーロ(約328万5000円)での落札となった。

相場右肩上がり時代に陰り?

ちなみに今回のアールキュリアルの競売で、事前予想落札値からもっとも大きく最終落札値が跳ねたのは、1974年式VWコンビTI 1600。

9シーターでサンルーフとラック付き、アッパーウィンドウを含めれば23もの窓を備え、しかもレストアを昨年済ませたばかりの個体だ。

V6仕様のアヴァンタイムはユーズドカー市況に近い価格で落札された。
V6仕様のアヴァンタイムはユーズドカー市況に近い価格で落札された。    南陽一浩

予想落札値の5万~7万ユーロから最終的に付けられたプライスはなんと、19万2852ユーロ(約2800万円)。

当初の中央値から3倍以上もの高値に到達したのだ。

先述のディーノ246GTSに対する296GTSもそうだが、ID.バズがいよいよデビューを控えている以上、直近で系譜の繋がりやすいニューモデルがあると、やはりヒストリックカーの価格動向も高々と跳ねる傾向は否めない。

もう1ついえるのは、オークション相場が右肩上がりだった時代は、欧州でも確実に終わり始めたということだ。

例えばルノーのコレクションではないが、1959年式ルノー・フレガートのカブリオレ、DSのオープンボディ製作でも知られるアンリ・シャプロンが手がけたコーチワークで、たった3台しかつくられなかったうちの1台という希少性にも関わらず、予想落札値の下限だった8万ユーロにごく近い、8万4632ユーロ(約1230万円)で決着した。

最終的に競売が成立せず取り下げられた個体も少なくなかった。

ただし、もしかして今回は小手調べなのかもしれない。つまり今後もルノー・ヒストリックがコレクションを整理することがあれば、EVモデルの登場と軌を同じくして、5ターボやサンク・アルピーヌの元ワークスカー、貴重なスポーツモデルが出てこないとも限らない。

オンラインでも競売への登録と参加は十分可能なので、円安の追い風は期待できないにせよ、その時を待ってみたい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    南陽一浩

    Kazuhiro Nanyo

    1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。

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