買えるときに買っておけばよかったクルマ 12選 価格高騰で手が出せない名車たち

公開 : 2022.10.29 06:05

ロータス・エリーゼS2

夢にまで見たロータスは、時折悲嘆にくれるほどの高嶺の花となっている。現在の市場原理では、試乗記事の給料で所有できるチャンスはほとんどないだろう。筆者はKシリーズ・エンジンのエリーゼを新車でレビューしたことはない。エリーゼの試乗は、最高出力192psのトヨタ製1.8Lエンジンを搭載したシリーズ2(S2)が最初であった。

初めて乗ったのは2005年頃のエリーゼRで、その数年後に試乗したのは最高出力220psのスーパーチャージャー付きエリーゼSC。このトヨタ製エンジンは、エリーゼに信頼性だけでなく高回転域での力強さをも与えてくれた。

ロータス・エリーゼS2
ロータス・エリーゼS2

しかし、定評のあるハンドリングの繊細さとフィーリングは、すべてそのままだ。20代の頃、まだ経験も浅かったが、これほどまでに操縦性やハンドリングに優れたスポーツカーは初めてで、感銘を受けた。

で、今は? S2のエリーゼRは3万ポンド(約500万円)、SCはさらに高価で、どんどん上がっている。かつて筆者が抱いていたような、いつか安く手に入るかもしれないという淡い期待は、泡となって消えた。

BMW 325i

筆者は、スクールバスの中で友達に見せるために、広告のリード画像をプリントアウトしたほど、その魅力に取り付かれていた。1988年のBMW 325iクーペで、希少なMテクニックのボディキットと輝くBBSホイールが装着されており、筆者の目にはM3エボリューションと映ったのだ。

街中で何度か見かけるうちに、ロマンチックなシュワルツ(ドイツ語で「黒」)の塗装が心に刺さるようになってきた。さらに、車両保険と盗難保険をぼんやりと比べてみても、保険会社から笑われることもなく、初めて乗るクルマが自然吸気の直6であるという現実的な可能性を考え始めたのである。

BMW 325i
BMW 325i

しかし、それは叶わなかった。中古車価格は当時の限度額である2000ポンド(約33万円)をわずかに上回ったところで底を打ち、現在では1万2000ポンド(約200万円)の値がついている。

それから8年後、筆者はようやくE39型5シリーズというオールドスクールなBMWを手に入れることができたが、E30型は今でも欲しいものリストのトップである。最近では、316iのオンボロAT車でもいいくらいだ。

フォード・シエラ・コスワース

筆者はかの有名なフォード・コスワース(通称、コッシー)で、またしても愚かな失敗をした。シエラRSコスワースは、1986年、新進気鋭のフォードのモータースポーツ部門責任者スチュアート・ターナーによって、欧州全土のグループAレースで勝つために生み出されたモデルである。フォードはこれを、レギュラーモデルとして採用した。

また、ホモロゲーションスペシャルモデルとして、RS500が数台製造された最高速度240km/h、車両重量1200kg、ツインカム、3ドアのシエラに、想像を絶する巨大なホエールテール・スポイラー(270km/hで車体を地面に押さえつけるために必要だったらしい)を装備した新型車を投入。かなり気を引かれたものだ。

フォード・シエラ・コスワース
フォード・シエラ・コスワース

とにかく、このクルマが1986年のある日、長期テストとして筆者の手に渡り、かなり楽しい時間を過ごすことができたのだ。207psのパワー(後のモデルでは四輪駆動の223psに増強)を楽しみながら、サーキット走行から欧州ツアーまでいろいろなことをやって、人々からホエールテールを見つめられるのにも慣れた。このクルマを買い取ることもできたのだが、トランスミッションが弱く、頻繁に修理が必要で、弱気になってしまった。筆者の負けだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

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