スズキ・ワゴンR FZ

公開 : 2014.09.26 23:50  更新 : 2021.10.11 09:06

■どんなクルマ?

スズキの軽ハイトワゴン、「ワゴンR」がマイナーチェンジされた。今回のマイナーチェンジで最大のトピックスは、低燃費技術の進化。これまでスズキは、減速時に発電した電力をリチウムイオン・バッテリーに蓄え、それによって電装品への電力供給を行う「エネチャージ」を、ワゴンRに採用していたが、それを新たに「S-エネチャージ」へと改良したことなどで、燃費性能をさらに向上させてみせたのだ。ちなみにこのS-エネチャージを搭載するのは、標準ボディーの「FZ」と、よりスポーティーな外観を持つスティングレーの「X」。この両グレードで達成した、JC08モードで32.4km/ℓという燃費性能が、軽ハイトワゴン市場でのワゴンRの人気を、さらに決定的なものとしてくれることは間違いないだろう。

エネチャージからS-エネチャージへの進化を象徴する技術は、ISG=インテグレーテッド・スターター・ジェネレーターだ。スターターモーターとオルタネーターを統合したこのシステムは、これもまたマイナーチェンジで性能をさらに向上させた、リチウムイオンバッテリーの充電はもちろんのこと、アイドリング・ストップからのエンジン再始動、さらに15〜85km/hの速度範囲内で、最大約6秒間と、その作動時間は短いものの、加速時にはモーターアシストの機能も果たす。これによってエンジンの負担を低減し、燃費向上をサポートするのだ。

アイドリング・ストップは、作動速度の見直しが行われたほか、ブレーキ・ペダルには、新たなストローク・センサーを採用。ドライバーが自分自身の意思でブレーキを解除したことをきちんと判断した後に、再始動が行われるようになった。つまり低速での走行と停止が連続する渋滞時などには、よりきめ細やかで自然な、アイドリング・ストップの制御が行われることになる。

搭載されるエンジンは、最高出力で52psを発揮する、658ccの直列3気筒DOHC。スペック上はこれまでのものから変化はないが、燃焼効率の向上や、組み合わせられるCVTの制御を見直したことなどで、これ自身も燃費性能向上に果たした役割は大きい。今回は、新たにS-エネチャージを搭載したモデルの中から、標準ボディの「FZ」グレードを試乗してみた。

■どんな感じ?

標準ボディ、スティングレーともに、新デザインのフロント・マスクを採用し、ニューモデルとしての斬新さを強くアピールする、マイナーチェンジ版のワゴンR。軽ハイトワゴンとしての機能性には、もはや異論を唱える余地はない。軽自動車枠という、いわゆるボディ・サイズの制約から、キャビンは横方向ではややタイトな印象があるものの、前後方向には十分な余裕がある。リアシートまわりのスペース、ユーザーからのフィードバックを的確に反映したともいえる、多彩な収納スペース。日本の軽自動車が、いかに優秀な工業製品であるのかは、その実用性がなにより的確にそれを証明する。

これからのワゴンRのキャビンに望むものがあるとするならば、それはいかにコストダウンを感じさせないフィニッシュを実現していくかだろう。価格にシビアな軽自動車の世界ではコストダウンは避けられないが、それをいかにユーザーに感じさせないようにキャビンを演出していくのかに、今後はデザイナーの、そしてエンジニアの技量が問われていくことになるのだろう。

記事に関わった人々

  • 山崎元裕

    Motohiro Yamazaki

    1963年生まれ。青山学院大学卒。自動車雑誌編集部を経て、モータージャーナリストとして独立。「スーパーカー大王」の異名を持つ。フツーのモータージャーナリストとして試乗記事を多く自動車雑誌、自動車ウェブ媒体に寄稿する。特にスーパーカーに関する記事は得意。

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