フェラーリ296 詳細データテスト 魅力的なサウンド 比類なきハンドリング 驚異のパフォーマンス

公開 : 2022.12.31 20:25  更新 : 2023.01.05 01:51

結論 ★★★★★★★★★★

F1では、ルールブックに勝るものはない。その改訂で、勝者が地位を追われることもある。マラネロでは、それを重々承知しているはずだ。対して市販車の世界では、そこまで明確に状況が変わることはないが、いまはそれが起きている稀有な時期だ。

そのことこそ、最新のフェラーリをほかには真似ができないほどみごとなものにした理由だ。458イタリア以来、フェラーリはカテゴリーのトップにあり続けた。その後もミドシップスーパーカーを投入し続けてきたが、守備範囲の広さも、魂の込もり具合も、比類なき走りのポテンシャルも、クラスをリードしてきた。

結論:輝かしいフェラーリの新世代スーパーカーは、多方面において比類なき才能を発揮する。
結論:輝かしいフェラーリの新世代スーパーカーは、多方面において比類なき才能を発揮する。    LUC LACEY

しかし今、F1のレギュレーション並みの変革に直面し、フェラーリはダウンサイズユニットの6気筒ターボを積んだプラグインハイブリッドの296GTBを送り込んできた。先の見えない、やや議論の余地もあるテクノロジーの時代へ突入したわけ、なにが犠牲になるのかもまだわからないくらいだ。

今回のテスト結果を見る限りなら、その犠牲はあったとしてもほんのわずかなものだといえる。この新型フェラーリはすばらしい。V8の系譜の終着点から、電動化のアドバンテージへとシームレスにバトンタッチしていて、懸念していたような欠点は見受けられなかった。

穏やかで、適応性があり、しかも激しく速くて表情豊かな296GTBは、壮観な走りと、魅力的なサウンドのV6を備えている。使い勝手にも優れるがスペシャルで、複雑なメカニズムでありながらわかりやすい。フェラーリは、ここでもベンチマークであり続けている。

担当テスターのアドバイス

リチャード・レーン

フェラーリが今後どこへ向かうのか、疑問に思える。というのも、296のレシピに必要ないもののひとつは、さらなるスピードだからだ。おそらくはピスタやスペチアーレといったような仕様が登場するだろうが、それらはパワーアップより、軽量化やもうちょっとアグレッシブな制御による根本的なアジリティの改善を追求するだろう。

マット・ソーンダース

これが秀逸なクルマであることに疑いの余地はない。個人的には、操縦系にもう少し手応えがあって、低い速度域でも楽しめたらうれしい。アルトゥーラは、そのどちらも備わっていた。この2台、好みは分かれるだろう。どちらも好きということにはならないはずだ。

オプション追加のアドバイス

サーキットを走る気がないなら、レーシーなシートにありがたみを感じることもないだろう。オールラウンドな使い勝手という観点では、マイナスとなるアイテムだ。カーボントリムも少ないに越したことはないだろう。ただし、カーボンディフューザーだけは見栄えがいい。

改善してほしいポイント

・カーボンファイバーシートに、もっと出来のいいランバーサポートをつけてもらいたい。
・296GTSのように、リアウインドウが開くといいのに。
・レッドラインが8500rpmというのはおみごと。しかし、もう500rpm回ればいうことないのだが。
・コクピットのタッチ式スイッチは、反応しないことが多すぎる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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