フェラーリ296 詳細データテスト 魅力的なサウンド 比類なきハンドリング 驚異のパフォーマンス

公開 : 2022.12.31 20:25  更新 : 2023.01.05 01:51

PHEVとなったピッコロ・フェラーリの完成度を危ぶんだのは杞憂でした。V8NAもかくやのレスポンス、上位モデルに迫るパフォーマンス、そして秀逸なハンドリング。仕様選びさえ間違えなければ、満点の走りを得られます。

はじめに

新型車が発売されるときはいつでも、自動車メーカーは直接的な先代モデルを引き合いに出すものだ。そこに意味を見出せるのは、一般的に新旧2台のクルマが近いもので、比較しやすい場合だ。

その点、フェラーリ296GTBのプレス向け資料は、先代にあたるF8トリブートに一切触れず、参照しているのは1957年に導入された1500ccのフォーミュラ2だった。こんなケースはまったくもってはじめてだ。

テスト車:フェラーリ296GTB
テスト車:フェラーリ296GTB    LUC LACEY

どうしてフェラーリがディーノ156F2の名を持ち出したのかといえば、この小さなシングルシーターが、フェラーリ初のV6搭載車だったからだ。もちろん、296GTBは跳ね馬のバッジを付けた初のV6ロードカーである。

このきわめて重大で、法規制に強いられたアプローチの転換は、数十年にわたって続いてきた、ミドシップのフェラーリはV8エンジン車だというフォーマットを打ち崩した。もっとも、シリンダーの数は、この話のひとつの側面に過ぎない。もうひとつ、ハイブリッド化という重要な要素がある。

2013年、センセーショナルなラ・フェラーリは、マラネロの電動化戦略がレースフィールドから公道へ応用されることを示した。それからテクノロジーはかなりの発展を重ね、2019年にはプラグインハイブリッドのSF90が登場。それらは限定生産車だったが、296GTBでいよいよ通常ラインナップのスーパーカーが電動化されたのである。

この流れはもはや、時代の趨勢となりつつある。296GTBの競合車としては、すでにすばらしい出来栄えのマクラーレンアルトゥーラが存在しているし、ランボルギーニウラカンの後継モデルをはじめ、多くのモデルが追随することになるのは間違いない。

しかし、フェラーリオーナー予備軍にとって、これはどんな意味を持つことになるのだろう。フェラーリのキモともいうべきソウルフルなパワートレインは、健在なのか。電動化による重量増加は、魔法のようなハンドリングを損ねてはいないだろうか。価格は法外ではないか。メカニズムは複雑になりすぎていないか。すべてありうる話だが、すべて解消されているかもしれない。今回は、それを確かめようというわけだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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