不評でもオープンは気持ちイイ トライアンフTR7 ジェンセン・ヒーレー 1970年代の苦悩 後編

公開 : 2023.04.09 07:06

コーナリングが楽しい2台のスポーツ

TR7の車内はより広く、ドライビングポジションも妥当。TRシリーズのなかでも、1番居心地は良さそうだ。

ダッシュボードのデザインは直線的で大柄だが、メーターは良く見える。センターコンソールにはソフトパッドが入った肘掛けがあり、左足を置けるフットレストも備わる。コンバーチブルは当初計画になかったことを考えると、ボディ剛性の高さには驚く。

トライアンフTR7(1975〜1981年/英国仕様)
トライアンフTR7(1975〜1981年/英国仕様)

ジェンセン・ヒーレーのエンジンを始動させると、ロータスの907ユニットがデロルト・キャブレターから積極的に息を吸い始め、2本出しのエグゾーストから勇ましい排気音が放たれる。ゲトラグ社製の5速マニュアルは、レバーの感触が少し曖昧だ。

ステアリングホイールはダイレクトで、反応は一貫している。乗り心地は硬めだが、カーブではボディロールが小さい。少し気張ってコーナーへ突っ込むと、高くない限界を明瞭に教えてくれる。かなり楽しい。

見た目とは裏腹に、TR7はMGとサンビームの良いところを組み合わせた印象。ヒーレーよりカーブではボディが大きめに傾くものの、乗り心地は優しい。2基のSUキャブレターは、意欲的にエンジンを反応させる。

ステアリングは、ジェンセン・ヒーレに迫るほど精度が高いわけではない。切り始めに無感覚の領域がある。それでも、回頭性はより鋭い。

優しく響くエグゾーストノートを伴奏に、田園の間の一般道をTR7で飛ばす。5速MTは滑らかで好感触。コーナリングの能力は高く、若干湿ったアスファルトでは本来の限界まで迫り切ることができない。

手頃な価格が不思議に思えるほどの魅力

今日まで優れた評価が与えられることのなかった、2台のブリティッシュ・スポーツ。改めて試乗したことで、冷たい空気を感じながらクラシックカーを運転する楽しさを再確認できた。やはりオープンは気持ちイイ。

ステアリングホイールを握る前までは、ジェンセン・ヒーレーを気に入るのではと予想していた。活気あふれるロードスターとして、実際に得られる喜びは大きかった。

ブルーのジェンセン・ヒーレーと、シルバーのトライアンフTR7
ブルーのジェンセン・ヒーレーと、シルバーのトライアンフTR7

しかし、トライアンフTR7は目からウロコだった。楽しいだけでなく、気兼ねなく乗れる、驚くほど身近なスポーツカーだと感じたからだ。

数は少ないが、まだ残存する個体を英国では発見できる。その手頃な価格が、不思議に思えるほどの魅力が詰まっていた。

協力:ロバート・ヘイドン氏、ジェンセン・オーナーズクラブ、リチャード・コンニュー 氏、ワールドワイドTR7 TR8オーナーズクラブ

ジェンセン・ヒーレー トライアンフTR7 2台のスペック

ジェンセン・ヒーレー(1972〜1975年/英国仕様)

英国価格:1810ポンド(新車時)/2万5000ポンド(約402万円)以下(現在)
販売台数:1万926台
全長:4115mm
全幅:1605mm
全高:1219mm
最高速度:197km/h
0-97km/h加速:7.5秒
燃費:8.5km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:965kg
パワートレイン:直列4気筒1973cc自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:142ps/6500rpm
最大トルク:17.9kg-m/5000rpm
ギアボックス:4速・5速マニュアル

トライアンフTR7(1975〜1981年/英国仕様)

英国価格:6382ポンド(新車時)/1万2000ポンド(約193万円)以下(現在)
販売台数:11万2368台
全長:4178mm
全幅:1681mm
全高:1257mm
最高速度:175km/h
0-97km/h加速:11.4秒
燃費:10.3km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1134kg
パワートレイン:直列4気筒1998cc自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:106ps/5500rpm
最大トルク:16.4kg-m/3500rpm
ギアボックス:5速マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・チャールズワース

    Simon Charlesworth

    英国編集部
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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