「ほぼ存在しない」市場シェア0.3%のジープ 失敗続きの英国で巻き返し 鍵はEV

公開 : 2023.05.23 18:45

米国の自動車メーカーであるジープは、苦戦する英国市場での業績回復を目指しています。ブランドCEOは、新型EVのアベンジャーを皮切りに、電動車の投入が切り札になると期待を寄せます。

苦戦する英国市場 EVで業績回復へ

米国の自動車メーカーであるジープは、AUTOCARの取材に対し、これまで「2度失敗した」という英国市場に再挑戦するため、電動化を大幅に推進する方針を示した。

ジープは、アベンジャーをはじめとするEV製品群を、SUV市場でシェアわずか0.3%という「事実上存在しない」地位にある英国での切り札として位置づけているのだ。

ジープはアベンジャーをはじめとするEVで巻き返しを図る。
ジープはアベンジャーをはじめとするEVで巻き返しを図る。

フランス人でジープブランドCEOのクリスチャン・ムニエ氏はインタビューに率直に答え、欧州におけるジープの新しい未来、ジープのイメージ、そして英国市場の重要性について語った。

――ジープの能力にとって電動化は何を意味するのでしょうか?

「わたしにとっては、4WDでEVを走らせることほどエキサイティングなことはありません。その理由は、トルク・オン・デマンド、ワンペダル・フィール、回生ブレーキです。アクセルとブレーキを同じペダルで操作するので、必要なトルクを得られるのです。非常に正確で、精密で、ソフトで、スムーズです。そして同時に無音なので、鳥の声も聞こえます。基本的には岩にタイヤが当たる音ばかりですが、これはかなりエキサイティングなことですよね」

――保守的なオーナーは変化に反対することもあるのではないでしょうか?

「ジープは、非常に早く、多くの成功を収めました。2年前に発売したラングラー4xeは、すでに北米のPHEVセグメントでナンバーワンになりました。そして、昨年11月に発売したグランドチェロキーは、ハイブリッドの世界で長く続いてきたいくつかのブランドを大きく引き離して、第2位にランクインしています」

「ジープは非常に好調で、その理由は製品の良さにあります。V6が好きな人たちが、電動のジープ・ラングラーを体験して、自分たちが間違っていたかもしれないと気づき、考えを改めるのです」

――英国はジープにとって例外的な国であり、国内SUV市場のシェアはわずか0.3%しかありません。なぜ、英国ではこれほどまでに成功できなかったのでしょうか?

「さまざまな理由があると思います。1つ目は、2014年にレネゲードを発売したとき、英国を含む欧州のあらゆる地域でかなり良いスタートを切ったのですが、その後、わたし達のパワートレインが排出ガスを理由に叩かれるようになったことです。税金やその他諸々のペナルティが課され、製品の勢いがなくなってしまったのです」

「その後、インド製造のジープ・コンパスを発売しましたが、これは右ハンドル車であったことが理由です。ところが、それは正しい判断ではなかった。英国市場のお客様のニーズは欧州とほぼ同じで、技術や安全性、パワートレインなど、あらゆる面で求められることが近いからです。ジープは2度失敗したと思っています」

「今、ジープは純粋なBEVであるアベンジャーを導入していますが、これはBセグメントの中でも小さい方で、英国ではかなり重要なセグメントです」

――英国におけるジープの成功とはどのようなものでしょうか?

「現在、ジープのシェアは英国のSUV市場の0.3%しかなく、およそ存在しないも同然です。幸いなことに、英国人はまだクルマを愛している。運転に対する情熱がまだあり、移動のためだけにクルマを買うわけではない。英国人は運転を楽しんでいるのです。だから、ジープというブランドも英国で共感を得られると思います」

「どの調査でも、英国人はジープブランドが好きで、ブランドには何の問題もないと言っています。そのため、ライフスタイルの要素を強化する必要があると思います」

「ここ数年、収益が上がらず、ブランドへの信頼を失っている販売店との関係を再構築する必要があります。アベンジャーはその触媒になると考えています」

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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