開発は多国籍 残る中国感 ジーカーX RWDへ試乗 一般ユーザーなら不満は抱かない?

公開 : 2023.11.04 19:05

柔らかい足まわりと一致しない操舵感

インフォテインメント・システムは、テスラのソフトウェアに影響を受けている様子。ただし、反応は素早いが、メニュー構造が論理的とはいえないだろう。うれしいことに、アップル・カープレイとアンドロイド・オートへ対応する。

シートはクッションがソフトで、体を優しく包む。運転姿勢は背筋を少し伸ばした格好で、目線は高めで、クロスオーバーらしい。腰を支えるランバーサポートは、張りが強く感じた。

ジーカーX ロングレンジRWD(欧州仕様)
ジーカーX ロングレンジRWD(欧州仕様)

今回の試乗車は、シングルモーターのRWD。272psをどのように展開するのか、期待を抱きながら発進してみる。

グリップ力は不足なく、トラクション・コントロールの介入も自然。リアタイヤへ強い負荷をかけても、スキール音が出るようなことはない。後輪駆動らしく、アンダーステアを抑えつつ、パワーを掛けながらコーナーを脱出できる。

サスペンションは柔らかく、カーブへ意欲的に侵入するとロールが大きい。加減速時にも、ピッチが小さくない。それでいてパワーは豊かで、モーターボートに乗っているように感じるかもしれない。

ステアリングホイールへ伝わる感触は希薄。ステアリングホイールは小さめで、切り始めから反応が鋭い。柔らかい足まわりと、一致しない設定といえる。

サスペンションは、減衰力が足りていないのか、強めの衝撃に対応しきれない。橋桁の継ぎ目などを越えると、ドシドシとノイズも立てる。高速走行時には、風切り音やタイヤの転がり音も目立っていた。

価格価値では有利 荒削り感は残る

ジーカーは、プレゼンテーションでXの優れた動的特性を主張していたものの、それに見合う仕上がりとはいえなさそうだ。運転支援システムも実装されるが、まだ開発段階ということで、オフになっていた。

航続距離は、シングルモーターで445kmが主張される。ツインモーターでは、421kmへ短くなるという。今回は、過ごしやすい気温のスウェーデンでの試乗となったが、電費は6.2km/kWhと良好だった。

ジーカーX ロングレンジRWD(欧州仕様)
ジーカーX ロングレンジRWD(欧州仕様)

欧州ブランドの競合クラスと比べた場合、完成度で並ぶとはいえない。しかし、一般的なユーザーにとっては、大きな不満を感じる差はないともいえる。価格価値という点では確かに有利かもしれない。

中国のクルマだとは感じなかったか、と聞かれると、答えはいいえ。ボルボと近い関係にある強みは表れているし、BYDより品質は高いかもしれない。それでも、ボルボやプジョーの量産車には存在しない、荒削り感は残っているようだった。

◯:特徴的なインテリアデザイン 競争力のある航続距離 訴求力のある価格
△:走行時の外界との隔離性 旋回時や加減速時の姿勢制御

ジーカーX ロングレンジRWD(欧州仕様)のスペック

英国価格:3万9000ポンド(約706万円/予想)
全長:4432mm
全幅:1836mm
全高:1566mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:5.6秒
航続距離:445km
電費:6.1km/kWh
CO2排出量:−g/km
車両重量:1855kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:69kWh
急速充電能力:−kW
最高出力:272ps
最大トルク:34.9kg-m
ギアボックス:1速リダクション(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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