上海モーターショー2023「イッキ見」 日欧の注目発表続々 迎え撃つ中国メーカーは

公開 : 2023.04.21 18:25

4月18日に開幕した上海モーターショー2023。重要な中国市場に向けた日本・欧州メーカーの新型車やコンセプトが次々と発表され、迎え撃つ中国メーカーもますます勢いを強めています。主要ブランドの展示を紹介します。

激アツの上海 圧倒的な開催規模

大規模なモーターショーは近年、欧州では衰退しつつあるが、今年の上海モーターショーはその重要性を再認識させてくれるものだ。

正式名称は「第20回上海国際自動車工業展覧会」だが、「オート上海」というブランド名で開催される。このイベントの規模は計り知れない。32万平方メートルの展示スペースに1000以上の出展者が集まり、100以上の新型車を紹介するプレスカンファレンスが150も開かれる。

ボルボ傘下のポールスターは、真っ赤なチューリップでブースを囲んだ。
ボルボ傘下のポールスターは、真っ赤なチューリップでブースを囲んだ。    AUTOCAR

そして、アップデート、バリエーション、サードパーティによるコンバージョン、既存製品の中国デビューに目を通したとしても、まだまだ注目の展示はある。前回の開催は、2021年、新型コロナウィルスの感染が拡大する中で、多くの海外企業が欠席した。

中国での規制が緩和され、海外企業は世界最大の自動車市場とのつながりを取り戻すべく、一斉に戻ってきた。欧州からはメルセデス・ベンツBMWフォルクスワーゲン、ポールスター、日本からはトヨタホンダ日産などが、広大な展示場で重要な発表を行った。

一方の中国企業も、特に膨大な数のバッテリー電気自動車(EV)で、迎え撃つ準備を万全に整えている。デザイン、パワートレイン、製造品質において、中国の最高級モデルは欧州車ともまったく遜色がなく、デジタル技術の面でも優れていることが多いのだ。

もちろん、中国政府が輸入ガソリンへの依存度を下げ、国内の自動車産業を加速させるために電動化へ移行するという大きな好機もある。しかし、中国には、国家統制、検閲、人権、地政学など、考慮すべき重要な問題があることも忘れてはならない。

ただ、自動車という観点で見れば、感銘を受けざるを得ない。BYDやジーリー(吉利)、スタートアップのニオ(NIO)といった中国企業のブースを見て回ると、彼らが現在生産している自動車の量、規模、種類に感心してしまう。

勢いを強める中国企業 海外進出も

だが、見るべきが多い今回のショーにおいて、最も特徴的で印象的だったのは、たった2台のクルマが展示されたブースだった。ポールスターは、8万本以上の赤いチューリップに囲まれた台座の上に、新型クーペSUV「4」と大型SUV「3」を並べて展示しているのだ。忘れられないドラマチックな光景で、大胆なビジュアルデザインを得意とするスウェーデンのブランドらしさを体現している。ポールスターがボルボから独立し、明確で魅力的なアイデンティティを確立したことの象徴でもある。

ポールスターが親会社である中国の巨大企業ジーリーのリソースと技術を活用できることは、言うまでもなく大きな助けになっている。同じくジーリー傘下で、ポールスターやボルボと共通のプラットフォームを使用し、欧州市場を意識したZeekr(ジーカー)とLynk & Coもかなりの存在感を示していた。

上海モーターショーでは中国企業の躍進も改めて実感できた。
上海モーターショーでは中国企業の躍進も改めて実感できた。    AUTOCAR

Zeekrは新発表の展示はなかったが、プレスカンファレンスで欧州市場への参入を発表した。欧州部門責任者のスピロス・フォティノス氏は、Zeekrが今後10年以内に「メジャープレーヤー(大手)」になると豪語している。大胆な発言だが、そのためのリソースは確かにある。

Zeekrは現在、中国で高級EVブランドとして事業を展開しているが、この分野のトップブランドはおそらくニオであり、ポールスターに匹敵する虎の子のEVブランドである。欧州導入は予定より遅れたかもしれないが、中国ではトップクラスの企業であることを証明しており、顧客(ニオが言うところのユーザー)は純粋にニオに対して情熱的であるように見えた。

ニオのCEOであるウィリアム・リー(李斌)氏が、来場者にツーショットの写真撮影を要求されながら、自分のスタンドで交渉する姿を見れば、その熱意がわかるはずだ。ニオは顧客の間でコミュニティ意識を高めており、このゲームにおいてブランドがいかに重要であるかを示す好例と言えるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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