まだまだ頑張る現役総編集長の奮闘録

2025.05.09

今回の笹本総編集長コラムはレイル・マガジンでの連載『SL甲組の肖像』などで知られる朋友、椎橋俊之氏の最新単行本『ドキュメント北海道路線バス 地域交通 最後の砦』の紹介です。

【笹本総編集長コラム】厳冬の北海道で、荒れ狂う自然と闘い住民の足を死守する路線バスの運行を描いた単行本『ドキュメント北海道路線バス 地域交通 最後の砦』を読みました

椎橋俊之さんの最新刊を読む

椎橋俊之さんといえば、鉄道趣味の世界では蒸気機関車が現役であった時代の機関士や整備士の苦闘を描いたバーチャル ドキュメント・シリーズ『感動の所在地』や『SL甲組の肖像』などの、珠玉の名作を生み出している語り部である。

その椎橋さんが路線バスという新分野にチャレンジし、新たに書き下ろしたのが表題のドキュメントである。

2年ほど前、「今度は北海道の路線バスのドキュメントを書こうと思っている」という話をご本人から聞いた時、鉄道のようなダイナミックなドラマがあるのかとやや心配していた。しかし、出来上がった著作の第一章のオホーツク沿いの冬の有り様を読んだだけで、過酷な自然と闘い、日夜果敢に走り続ける路線バスの運行のドキュメントに引き込まれ、まるで自分がバスの乗務員になったような臨場感を味わうことが出来た。

この本の前半は広大な北海道各地の路線バスのルポであり、後半は、高知県の室戸市で本格運用が始まった最新のDMVなどの新しい試みのレポートが掲載され、同時に地方の交通機関の諸問題について深く掘り下げて、問題提起がなされている。

海外でも、英国のロンドン市内の路線バスのドキュメントの中で、その問題解決の仕組みの素晴らしさについてレポートしているのが見事だ。

ドキュメントを読みながら、現在そして未来の地方の地域交通の在り方について、考えさせられることが多く、ぜひ一読をお勧めする一冊である。

『ドキュメント北海道路線バス 地域交通 最後の砦』
筑摩選書 320頁
著者 椎橋俊之
定価1980円

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    笹本健次

    Kenji Sasamoto

    1949年生まれ。趣味の出版社ネコ・パブリッシングのファウンダー。2011年9月よりAUTOCAR JAPANの編集長、2024年8月より総編集長を務める。出版業界での長期にわたる豊富な経験を持ち、得意とする分野も自動車のみならず鉄道、モーターサイクルなど多岐にわたる。フェラーリ、ポルシェのファナティックとしても有名。

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