【販売増 2つの理由】マクラーレン日本支社 見えた課題・次の一手

公開 : 2020.02.18 06:10  更新 : 2021.10.11 09:29

前年比で約60%も販売を伸ばした「マクラーレン日本支社」。その理由は2つあると考える同社代表にインタビュー。見えた課題と、次の一手を教えてくれました。

マクラーレン日本支社代表に訊く

text:Kenji Momota(桃田健史)
photo:Kazuhide Ueno(上野和秀)

日本でのマクラーレンの業績が好調だ。

日本自動車輸入組合の調べでは、2019年は前年比159%となる年販353台を記録。アストン マーティン(314台)を抜き、スーパーカーのツートップ、フェラーリ(870台)とランボルギーニ(678台)を見据えた追撃体制に入ったように見える。

新たなカスタマーを呼び込むことが期待される新型車「マクラーレンGT」
新たなカスタマーを呼び込むことが期待される新型車「マクラーレンGT

そうした中、マクラーレンとして初めて、東京オートサロン(2020年1月)に自社ブースを構え、昨年発表した「GT」などを出展した。メディア向けプレゼンテーションの後、マクラーレンの日本戦略について、マクラーレン・オートモーティブ・アジアのヘッド・オブ・ジャパンである正本嘉宏氏に話を聞いた。

ーー東京オートサロン出展の理由は?

「マクラーレンは、究極の走りの楽しさを提供するブランドだ。オートサロンはクルマ好きが集まる場であり、マクラーレンにとって新たな顧客と接する場にしたい。これまで、日本のクルマ好きの皆さんにマクラーレンの価値をはっきりと伝えられていなかったことを踏まえて、この場を選んだ」

ーースポーツシリーズ、スーパーシリーズ、アルティメットシリーズと、確実にプロダクト・ポートフォリオを形成してきたが、昨年の販売実績、年間353台は想定の範囲内だったか?

「我々の想像以上に販売が伸びた。理由は2つあり、まずLTシリーズが人気となったこと。2つめは国内5番目の拠点である東京のマクラーレン麻布がオープンしたことだ」

2018年夏に「600LT」についてお話を聞いた時点では、日本でより活発的な顧客対応プログラムを展開するとお話しされていた。

富士スピードウェイでのトラックデージャパン2019年は参加台数ではマクラーレン販売国として第1位となる規模まで拡大。カルチャー体験を含めた10日間プログラムも開催されるという2020年について伺ってみた。

富裕層が動いた

ーー今年は「GT」の販売が本格化することもあり、さらなる新規プログラムの計画はあるか?

「通常の広報活動以外に、より小回りが効く富裕層向けのイベントを行う。手始めに、2月には、社交ダンスの日本の第一人者の方とコラボして行う。そのほか、ボート、クルーズ、ゴルフなど、様々なライフスタイルを切り口としたコミュニティとのコネクションの構築を進める」

マクラーレン・オートモーティブ・アジア ヘッド・オブ・ジャパンの正本嘉宏氏
マクラーレン・オートモーティブ・アジア ヘッド・オブ・ジャパンの正本嘉宏氏

ーー富裕層は本物志向。そうした“本物を知る人”がキーパーソンとなって、マクラーレンの良さを広げていく、といったイメージか?

「富裕層は多趣味であり、本物を知っており、その中にクルマという軸でこだわりを持っている方がいる。そうした方にマクラーレンを心底好きになって頂き、そこからの口コミで、まるでオセロゲームのようにマクラーレン支持者が増えていく。こうした富裕層ビジネスを、我々として目の当たりにしている。一般的なブランディング活動以外に、このような富裕層向けのニッチマーケティングの必要性を強く感じる」

ーーフェラーリやランボルギーニではなく、マクラーレンを、と。

「イタリアン・スーパーカーに比べて、マクラーレンのブランドバリューはまだ低く、仮にマクラーレンに対して興味があっても、少し敷居が高いと感じている方もいる。かなりクルマに精通していないと、マクラーレンに対して一歩踏み込んで、実際に試乗してみようというステージにいかない。そこにマクラーレンをしっかりと理解し、豊富な情報量による説得力があるオピニオンリーダー、ないしはブランドアンバザダーのような方の存在が非常に大きい」

記事に関わった人々

  • 上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。
  • 桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?

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