単なる速いEVに終わらない! 新型『アルピーヌA110』が挑むEVスポーツカー革新(後編) 目指すのは最高の乗り心地とハンドリング性能 

公開 : 2026.07.09 22:50

7月9日、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2026で『アルピーヌA110フューチャー』が初走行を披露しました。ここではそれに先駆けて開催されたテックデイに参加した山崎元裕が、新型に採用される技術を解説します。その後編です。

ドライビングへの没入感を十分に得られるキャビン

2シーターの新型アルピーヌA110に続いて追加予定となる2+2バージョンのAPP(アルピーヌ・パフォーマンス・プラットフォーム)では、バッテリーはフロア下のホイールベース間に搭載されることになる。フロアは若干高めになり、それによってドライビングポジションも多少上昇することは避けられないが、それでもなお、ドライビングへの没入感を十分に得られるキャビンが設計されるだろう。

また、2シーターバージョンでは、デュアルリアeパワートレーンが搭載されるが、これはふたつのインペラ、ふたつの減速機、ふたつのインバーターをコンパクトに一体成型した新開発のもの。モーターの最高回転数は2万rpmで、ローターとステーターの両方にオイル冷却システムを導入するなど、耐久性を意識した対応にも万全の備えを見せている。

パリ近郊のギュイアンクールにある研究開発センターで開催された、技術説明を行うテックデイ。
パリ近郊のギュイアンクールにある研究開発センターで開催された、技術説明を行うテックデイ。    アルピーヌ

一方2+2バージョンでは、さらにフロントにeパワートレーンが追加される。ちなみにこのモデルでアルピーヌが掲げたコンセプトは、BEVスポーツカー時代の新しいリーダーとなること。果たしてどのようなモデルが登場してくるのだろうか。

直面した技術的な課題とは

新型A110、そしてそれに続くスポーツカーを開発するにあたってまず直面した技術的な課題は何だったのか。それに対してアルピーヌのCEO、フィリップ・クリーフ氏はこのように答えている。

「主に3つの大きな技術的課題に直面しました。まずバッテリー搭載に伴う重量増加を最小限に抑えることと、それに関連する要素のサイズを最適化すること。そして車高を1.25m未満に抑えつつ、ドライバーを可能なかぎり低い位置に着席させ、真にスポーティなドライビングポジションを提供すること。そしてダイナミックな走りを演出するために、電動パワートレーンの音響特性とサウンドシグネチャーを洗練させることです」

テックデイでプレゼンを行うアルピーヌのCEO、フィリップ・クリーフ氏。
テックデイでプレゼンを行うアルピーヌのCEO、フィリップ・クリーフ氏。    アルピーヌ

現在のA110が特別なスポーツカーとして評価されている理由は、極端なパワーや加速性能を追求していない点にある。その後継となるBEVが、単なる速いBEVに終わらないようにするためには、どのような工夫をしているのか。

「重視しているのはコーナリングの精度、シャシーのバランス、そしてドライビングフィールです。パフォーマンスは単に数値で測るものではなく、身体で感じられるものでなければならないというのがアルピーヌの哲学です」

その走りをより魅力的なものに導く

実際にAPPのフロントアクスルやリアアクスルの設計を見ると、アルピーヌがそれらを実現するために、いかにこだわりのあるエンジニアリングを展開しているかがよく理解できる。

リアアクスルはその多くのパートが新設計されており、鍛造のアルミニウム素材がコントロールアームや上下のウイッシュボーン、ホイールキャリア、サスペンションとロワウイッシュボーンを接続するフォークなどにも使用されている。

研究開発施設では、シミュレーターの様子も取材。
研究開発施設では、シミュレーターの様子も取材。    アルピーヌ

このロワウイッシュボーンは、コンフォートとパフォーマンスのトレードオフを解消するため直角にデザインされている。フロントではアンチロールバーがアッパーウイッシュボーンボーンに接続される設計になったことも、注目できるポイントのひとつといえるだろう。ステアリングは、電動アシストを備えた機械式が採用されるそうだ。

新型A110では、もちろん最新のトルクベクタリングやヨー制御など、様々な電子制御デバイスが常時ドライビングに介入し、その走りをより魅力的なものに導いてくれる。

そんなハードウエアとソフトウエアの両面で大きな進化を遂げたBEVスポーツとなる新型A110に対してアルピーヌは、それらが走りにどれだけの影響を与えていると考えているのだろうか。

「バッテリーレイアウトと重量配分、サスペンションデザインとジオメトリー、そして軽量化と剛性といった基本的なハードウエアの設計は、走りの基本を決定づける直接の要素です。一方でトルクベクタリングやヨー制御、シミュレーションを活用した介入の微調整などもまた、現代のスポーツカーにおいては必要不可欠な要素となります」

記事に関わった人々

  • 執筆

    山崎元裕

    Motohiro Yamazaki

    1963年生まれ。青山学院大学卒。自動車雑誌編集部を経て、モータージャーナリストとして独立。「スーパーカー大王(超王)」の異名を持つ。フツーのモータージャーナリストとして試乗記事を多く自動車雑誌、自動車ウェブ媒体に寄稿する。特にスーパーカーに関する記事は得意。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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