「無名」ブランドから躍進 BYDが自動車業界の根本を変える ボノ・ゲ氏:英国リーダー賞 #AUTOCARアワード2026

公開 : 2026.07.09 17:25

中国の大手自動車メーカーBYDは近年、英国で目覚ましい成長を見せています。販売は急伸し、新モデルや新ブランドも続々投入。かつては無名だった存在から、どのように飛躍したのか。UK責任者ボノ・ゲ氏に話を聞きました。

飛躍を遂げたBYDの英国事業

英国の自動車業界ウォッチャーの中には、中国の大手自動車メーカーが英国市場で急速に躍進していることを、他社よりも低価格で先進的なクルマを販売できる能力に支えられた、いわば「努力をせず一夜にして成し遂げられた成功(unearned overnight success)」と見なす傾向がある。

この見方には一理ある。何よりも、数十年前から中国政府が世界の電動車市場が将来覇権を握ることになると認識し、国内企業を成功させるための環境を整えてきたことが挙げられる。しかし、この壮大な野望に向けて中国自動車メーカーが最近示している目覚ましい進歩の裏には、長年にわたる汗と苦労、挫折、失敗、過ち、そして行き止まりと、数々の困難があった。

BYD英国部門を率いるボノ・ゲ氏
BYD英国部門を率いるボノ・ゲ氏

多くの中国メーカーの中でも最も注目を集めているのが、テスラを凌いだBYDだ。

こうした飛躍には何が必要なのか。それを如実に物語っているのが、BYDの英国部門責任者であるボノ・ゲ氏の経歴だ。彼は昨年9月、英国が中国以外でBYD製品にとって最大の市場になったと誇らしげに発表した。2011年にBYD UKを設立したボノ・ゲ氏は、当時について「クルマについては何も知りませんでした」と明るく振り返っている。

年間10万台規模も目の前?

昨年、同社は英国で5万台強を販売したが、これは2024年の販売台数の約6倍に相当する。ボノ・ゲ氏は2026年の見通しについてはあえて予測を避けているが、間もなく登場する6車種の新モデル(普及向けブランドのBYDと高級ブランドのデンツァの両方)を考慮すれば、遅くとも2027年までには販売台数が6桁台に達すると予想されている。その段階になれば、トヨタを追い抜き、ヒョンデキアといった韓国企業に肉薄し、フォードBMWと真っ向から勝負することになるだろう。

ボノ・ゲ氏は2008年に大学を卒業してすぐにBYDに入社し、当時は主力事業であったバッテリーやバスの事業に携わっていた。その後、海外展開のために採用された12人の若手新卒者からなるタスクフォースの一員として、欧州へ赴任した。

BYDアット3エボ
BYDアット3エボ

彼らはバッテリーとバス事業で成功を収めた(現在、ロンドン交通局は約2800台のBYD製電動バスを運行している)。しかし、2013年にタクシー会社グリーン・トマトと提携して『E6』という平凡なEVを投入しようと試みたものの、プロジェクトが本格的に始動する前に中止されてしまった。

ボノ・ゲ氏は欧州各地でエネルギー貯蔵システムの事業に携わっていたが、電動化への関心の高まりを受け、BYDが英国での自動車販売を本格化させることになり、再びこの地へ戻った。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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